彼女の話

彼女のおでかけー駅

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彼女が駅をつかうようになったのはごくごく最近のことだ。
彼女が生まれ育った場所には駅はなくほとんど小説の中の想像上の場所だった。
ラピュタみたいなものだった。


今彼女が住む町には駅がある。
ベッドタウンの最寄り駅のわりに小さな駅だ。
駅は彼女のそれまでのイメージと違った。


彼女はみんなが行く上りよりも下りの電車に乗ることが多い。

みんなとは逆のプラットホームに立つ。


彼女が行くその場所はいつも人がいなくてガラガラなのに
彼女は改札を抜けると緊張する。

ホームはステージだからだ。


いつも思う。


下り線のプラットホームに立った時、レールを挟んで向こう側には
いつもたくさんの人がいる。
反して彼女が立つホームには彼女のほかにひとりかふたり。
それはまるで劇場やホールのステージと観客席のようなのだ。


彼女は少し離れたところにいる共演者に目をやる。
いつなんどきも80%を超える確率で彼らはスマホに目をやっている。
彼女には目もくれない。

彼女はおずおずとベンチに腰をかける。
向かい側の観客達を見ないふりをする。
彼らはカボチャでイモだ・・・!


一瞬目をやるとなぜか向こう側の人間に限ってスマホをあまり見ていないような気がする。
それよりも面白い何かがステージ上にあるかのようにこちら側をみている。
彼女はその凝視を意識する自分に気付く。


そしてまっすぐに前を向く。


駅はステージだ。
彼女の中で今駅はラピュタではなくステージになっている。



彼女のおでかけー駅

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