彼女の話

サンタマリア号

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(※映画『トゥルーマンショー(The Truman Show/1998)』よりネタバレ注意)




自分が一体どこから来て、何者になっていき、どこへ行くのか。
到底答えが出そうもないこのテーマについていつのまにか考えを馳せるとき、
彼女はときどきこの映画を思い出す。
自分のサンタマリア号はどこに碇を下して停泊しているだろう。


『トゥルーマンショー』では主人公トゥルーマンのそれが実に明確に伝えられている。
彼は”産みたくなかった母親”から生まれ、万里の長城並みの巨大なスタジオという”環境”のなかで育ち生き、
その世界に激しい疑問を抱く人となって、サンタマリア号に乗り込み空の壁のドアから外の世界へ出て行く。
(細かい解釈は人それぞれとして、まあこんな感じだ。)

彼女はぼんやりと天井を見上げながら、そんな大きなセットの中での人生も悪くないのではないか、と思う。
危険はない、自分をものすごく激しく陥れるものもない、
だからいやな記憶を思い出すこともなければ、そもそも作られることもない。
大体トゥルーマンがあの世界に疑問を持ってしまったのは、(映画としてのストーリー進行上不可欠であった、)数々の小さなミスが原因だったのであって、それらがまったくないもっと完璧な世界だったのなら、彼が哲学者でもなければ”この世界は、、、この島は、、、”などと思い始めることもなかったのではないか。

そこまで考えて彼女は、
じゃあ(哲学者でもない)自分がそんなことを考えるのは、彼のスタジオ世界と同じでこの世界にも何かほころびがあって見たくもないそれを自分は視界の端々で捉えながら気づいて気づかぬふりをしているのではないか。だとしたらそれは何なのか。ヘマをしているスタッフが、エキストラが、この世界にもいる。または「私に」この世界の本質に気づかせようと近づいてくるシルヴィアや外部からの闖入者が・・・

それならこの世界とあの映画の世界と一体何が違うだろう、同じじゃないか??あの空もこの風も大好きなこの城をつくる全ても。

そこまで考えて彼女はいったん思考を止めた。
「頭がおかしい」

そして彼女は思い直した。
「もしこの世界が今この瞬間も誰かにコントロールされているとしたら、トゥルーマンだけでなくおそらく私たちの誰も気づいていないことになる。それでも一部の人たちが気づく”この世界のほころび”は何かの進行上必要不可欠なものであるということだ。」

そして彼女は思う。
「それならばあのサンタマリア号もきっと私たちひとりひとりに一艇ずつあるはずで、すでに見つけて出港していった人たちもいるはずで、私のそれもこの世界のどこかにあるはずなのだ。そしてその時、トゥルーマンのように人々ににっこり笑ってあいさつできるか、サンタマリアの現在地の座標と私の心意気と結局考えの行きつくところはそこなのだ」





(※特定の箇所をぼかしたりコマ送りしてミニチュア世界を描くとても面白い作品ですが、彼女のように観ていると気分が悪くなる人もいます。視覚的な刺激に弱い人は、”Keith Loutit Bathtubシリーズ”が彼女のおすすめです。)

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