彼女の話

退行する彼女

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彼女は自分は成長どころか退行していると感じている。



彼女はNと相変わらず連絡をとっていない。
Nからは、週末を使った小旅行に行かないかと誘いがあったのだが答えていない。
読んだときは何も思わなかった。
嬉しくもなかったし、不機嫌になったわけでもない、文字通り何も感じなかった。

彼女は最近どうも自分は怒っているのではないかと気付いた。
週末休みじゃないし、お金ないし、行けないの分かり切ってることをなんで訊いてくるわけ?


それからNのことを考え出すと、
今までNがいなければ生きづらかったから感じないようにしていただけで、
本当はNに対して我慢していたことがあったんじゃないか、という気がしてきた。

今までのことを回想しながら彼女はNへの嫌悪感を自覚せざるを得なくなってきた。
それがNが努力した結果であろうとなかろうと
頼れる家族も、恵まれた容姿も、確固たる自信も、素直で正直な心も、
社会的地位の高い仕事も、理想通りの婚約者も、ほかに友人もたくさんいる。
でも何でも話せるあなたという友達も大事なの、とNは思っているだろう。

彼女はそんなのおかしいと思った。
自分はそのひとつも持っていないのに、
それらすべてを持っていながらそれでも自分とも繋がっていたいなんて贅沢だと思った。
Nは自分という親しい旧友の一人くらい失うべきだ、と思った。
そうでなければおかしいじゃないか、と。


彼女はNともう連絡をとらないつもりでいる。

彼女も分かっている。これは明らかに彼女の勝手だ。
Nからしたら20年以上付き合ってきた一番古い友人が
何だか具合も悪そうなまま音信不通になるのである。
訳が分からない。

以前にも書いたようにハッキリ言って彼女は社会的にも精神的にも
これまでNの助けなしには生きてこれなかっただろう。
でも彼女はここでもうそれも終わりにしたいのだ。

Nが保証人をしてくれている今の城から引っ越して
次は保証人不要で契約できるところを探そうとも思っている。
その時にこれまでのお礼と引っ越しの連絡をしたらもうそれで終わりにしたい。
それまでもそれからも話したくない。
もう頼りたくない、関わりたくないのだ。

近い将来Nが結婚して子供が生まれ、Nの念願の一軒家が建とうとも
彼女はちっとも嬉しくない。
何も祝える気がしない。
きっと本当は今までだってずっと妬んでいたのだ。
Nが自慢する物事やNから与えられたものへの称賛もただ愛想よくしていただけだ。
本当は全部面倒くさかったのだ。


彼女はざまあみろと思った。
「あなたが私を思っているほど、私はあなたのことを思ってなんかいない。
でも大丈夫、あなたは私がいなくても今この瞬間も笑えてるでしょ」



果たしてどうだろう?
彼女は「退行」しているのだろうか?

-彼女の話

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