彼女の話

スパティフィラムの幸せ自慢

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夜中彼女はふと目を醒ましてそばの明かりをつけた。
スパティフィラムが葉先に露を溜めていた。

スパティフィラムは水をたっぷり与えられると根で吸収したのち、
水分コントロールのために余分な水分をそうやって葉先に露として放出しようとする。
これは温度や湿度が整った条件でないと見られない。

彼女はそんなことを思い出しながらぼんやりと膨らんだ滴を眺めていた。
無色透明だけれど、何かを映し出せるほど大きくもない。

つい先ほど自分が明かりをつけるまで
暗闇の中でこの一滴をヨイサヨイサとこしらえていたスパティフィラムを想像した。


十分な水と適温と心地の良い湿度。

満たされている。


彼女は「ああ!」と言ってひらめいた。
「幸せ自慢ね」。


白熱灯の角度を変えると滴は明かりを反射して薄い橙色に染まった。
「まあまあ、そんなに照れないで」


目を細めた彼女は瞼の重さを思い出すとそのまま眠りにおちてしまった。

-彼女の話

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