彼女の話

絶対に落としてはいけなかったきのこ

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最近彼女は毎日そわそわイライラしている。
落ち着かない。
心がもぞもぞする。

昔マッシュルーム農場で働いていた女の子のことを思い出した。
その日女の子は箱いっぱいに詰まった摘みたてのマッシュルームを
一箱全部ぶちまけてしまった。
ぷりぷりした真っ白のマッシュルームは
土埃をかぶったその瞬間すべて売り物にはならなくなった。
きのこ類は特にそういうものだ。
オーナーに申し訳ないことをした、
そう女の子は彼女にぽつり話してくれたのだった。
ひどく落ち込んでいた。

人のそんな話を彼女は何度も反芻する。
それももう何年も前のこと。
当事者の女の子でさえもう忘れているかもしれない。

彼女は想像する。
薄茶色の土の上に散らばった大小さまざまな形の真白のマッシュルーム。
その傍で佇む青いパーカーにスニーカーを履いた女の子。
絶対に落としてはいけなかったきのこ。

モヤモヤやそわそわを吐き出そうと大きく深呼吸したとき、
何かの拍子にスポッとマッシュルームが彼女の気道にジャストフィットしてその道を塞ぐ。
そしてしばらくは行き場を失ったため息だけが溜まっていく日々がつづく。

-彼女の話

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