彼女の話

安心のための食いしばり

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彼女の城は彼女にとって大体は心地のいい場所であることは間違いないが、
僕はそこで落ち着かない。

冬の彼女の大事なパートナーコタツはテレビの正面に配置されている。
映画をみるときの彼女の定位置だ。
ただしコタツというのは日々少しずつ位置がズレていくことがあるようで
微妙にテレビの真正面から外れていく。
ある日映画をみようとそこへ座った彼女は
テレビの状態表示のLEDが中心にないことに気付く。
そしてせっせとカーペットとコタツから元の位置に戻していく。
少しでもズレていると気になって仕方ない。

冬用のベッドシーツに毛玉がついてきて、
ケアをしなければと思いながら面倒でやっていない。
裏返して使えば気にならないが、うっかりそれを忘れてしまうと
体をふとんに入れた瞬間に足にあたる小さなぷつぷつに目が覚める。
夜中でも掛けふとんやら毛布やら全部引っぺがしてシーツを直す。

他にも顔をふくタオル、椅子の角度、照明の明るさ、
一緒にいるといちいちそれらを調節する彼女に
こっちはまったく落ち着かない。
その度に腰をあげて移動させられたり、
顎で使われた挙句に機微な調整について行けずため息をつかれる。
はっきり言うけど面倒くさい。
どうしてそんなことが気になるのか分からない。

彼女は自分のそんなところをどう思っているのだろう。
時々うんざりするような声をあげているし、
根が不精だから面倒だと思っていることはたぶん間違いない。
それでも動かずにはいられない。

彼女の食いしばりは今も続いている。

-彼女の話

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