彼女の話

子どもたち

投稿日:2020年1月17日 更新日:


彼女は子どもが結構好きだ。
遊び場の見守りの手伝いに時々出かけている。

子どもたちと接する時、彼女は相当無心にならざるを得ない。
考えて仮面を被り、取り繕っている暇など彼らは与えてくれない。
恐ろしいほどのエネルギーと感情と奇想天外な言動は
もはやついて行くのに精いっぱいだ。

子どもたちの他に大人もいる。
ふいに目に入った大人たちの姿に
彼女はすっかり仮面の剥がされた自分に気づいてうろたえる。
そうやって注意がそがれてしまった彼女に
子どもたちは目ざとく気づき、また彼らの世界に引き込もうと
向こうは向こうで必死になる。
彼女は忙しい。

その中でも今でも彼女が時々思い出す女の子がいる。
以前よくおばあちゃんに連れられてやってきていた。

Tちゃんはエコラリアする子だった。
いつもふんわりと笑っていて、相手の言った言葉を即時反復することが多かった。

彼女はTちゃんと話しているとまるで自分自身と話しているような
奇妙な感覚に襲われた。
Tちゃんはきいた言葉を繰り返す。
「すごいねぇ」「すき?」「ふしぎだねぇ」「いいねぇ」
彼女は自分でその言葉を発し、その自分の声を自分の耳で聞き、
またTちゃんの発した同じ言葉を聞いた。
何度も同じ言葉がふたりの間で繰り返される。
いつの間にかふたりだけの世界になっていくようだった。

子どもは不思議な存在だ。
自分自身もそうであったはずだ、とふっと思い出す。
どの子をみても自分の要素が少しずつ入っている。
どの子も自分に思えてくる。
彼女は子どもが結構好きだ。

-彼女の話

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