彼女の話

アンビバレンス2 ー花がら

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HSPはとかく外界からの刺激に対する敏感さを挙げられることが多いが、
自分の内界からの刺激にもそれは同じである。


自分が作り上げた妄想世界を自分自身で衝撃的に拒否してしまったあとも、
彼女が完全にその世界から離脱したかというとそうでもないようだ。

彼女は今も一日15時間から20時間ほど眠る過眠状態が続いている。
トイレに起きるか、わずかな食事や水分補給を済ますと、
またふてくされたようにコテンとベッドの隅に転がりそのまま深く眠る。

そのわずかな時間にも時々彼女はぼんやりしかけることがある。
ただし以前と違うのはすぐに”こちら”へ戻ってくることだ。
どうももう妄想の世界に行くことを彼女自身が良しとしていないような、そんな抵抗感がある。



人は寂しいと動けなくなる。
だから彼女はあの世界を必要とした。

毎朝目を覚ますために。
ドアを開けて外の世界を歩くために。
スケッチブックの上で鉛筆を躍らすために。
目の前の孤独をカメラのフレームに収めるために。
夜目を閉じて真っ暗な世界で眠るために。


人は安心できると前に進むことができる。
小さな子供が養育者をサテライトポイントにして新奇なものと安全なところとを何度となく行き来するように。
彼女は自分で作り上げた世界に安心を求める度に立ち返り、そして外の世界へ出て行くことができた。


彼女はおそらく妄想世界を失おうとしているのだ。
自分自身も知らない、その世界の奥にある何かを彼女は敏感に感じ取っている。
受け入れられず、でもいつかは受け入れなければならないことを感じている。
そこからの深く長い眠り。


彼女は顕在意識と無意識のちょうどハザマに立っている。

そこは相当量の水分を含んだかと思われる濃い霧で溢れていて、
いつ雨となって落ちてくるのをギリギリのところで堪えている、といったふうの重さが感じられる。
僕は彼女が頭が重いと両手で抱えていた姿を思い出す。
僕はこれらのすべてが不用意に降り落ち始めてしまうのではないかと危惧している。
それはとても危険なことではないだろうかと。


どんな花でも枯れる。
彼女はいつだって美しいものだけ見ていたかった。
でもどんな植物であってもその花がらを切り落とさずに更なる再生は見込めない。
大切なのはそのタイミングなのだ。


花がら

-彼女の話

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