彼女の話

探しもの

投稿日:2016年12月19日 更新日:

彼女の同僚の財布が消えた。
帰宅後連絡を受けた彼女は探すのを手伝いに職場に戻った。
見つからなかったらいけないので、失くした彼のために急場しのぎの数万円を財布に入れた。


まずはみんながパニクっているのを眺めた。
ある人は探し回り、ある人は交番に電話がつながらないと繰り返し、
なくした本人はクレジットカードのカスタマーサービスにつながらないとあたふたしている。

職場は広い。
やみくもに探すより彼女は同僚たちから状況をよくきいた。
彼女は論理的に物事を捉え分析するのが得意だ。

彼のその日の行動といつもの行動パターンや口癖、習慣も思い出して、
彼の話のいくつかがおかしい、と感じた。
テンパっている今の彼の言葉はあまり信用できない。
ふと職場を去る直前に彼女は彼が慌てて退社準備をしているのを偶然みたのを思い出した。
それらを総合的に判定して彼女はある場所がピンと浮かんだ。
ぜったいにここにある、と直感した。

そして彼女が職場に戻って10分ほどで財布は見つかる。


少し大げさなほどに感謝された彼女は内心少し得意になった。
日々の中で細かいことがいちいち目についてしまう自分も、
分析癖のある自分も、考えることがやめられない自分も
それはそれで本当はとても疲れるのだけど、
たまにはこうやって役に立つものだ、と。



-彼女の話

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