彼女の話

彼女と精油

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彼女は精油が好きでたくさんもっている。
高価なものなので、少しずつ少しずつ集めてきた。
中でもフランキンセンスが一番のお気に入りで欠かさない。


初めて精油の匂いをかいだとき、彼女はどれをとってもとにかく臭いと思った。
ひとつも好きなものはなかった。
今になってわかったようだが、昔は単純に精油を嗅ぎ慣れていなかったのもあるだろうし、
精油は一種類だけの匂いを嗅いでしまうと香りがキツすぎたりするらしい。
いくつかの精油をブレンドすることでかなりマイルドになるという。


彼女が誰かのために何かをするということはほとんどないが、
ときどきこの精油の調合はするのである。
誰かが頭痛がひどいとか夜寝付けないとか聞くと、
相手が嫌いかもしれないと心配しながらも症状に見合った精油をブレンドし
少量を遮光瓶につめていそいそと渡している。
渡した相手と日付と調合内容は手帳にメモしているようだ。


彼女は自分のことばかり考えているから、人のことなんてほとんど興味がない。
それなのにこの精油の組み合わせをああでもない、こうでもないと試作しているとき
確実にその相手のことをずっと想像しているのである。
彼女は自分でもこれが不思議だ。

精油は効能も多いが、注意事項や禁忌も多い。
精油と付き合うのは人と付き合うのと少し似てる、と彼女は思う。



彼女と精油

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