彼女の話

非日常

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彼女は橋の下に立っていた。
浩然と流れる川を見下ろしながら、
コンクリートの巨大な人工物に包まれ抱え込まれているような安心感。
橋の下はいつでも日常の中の非日常だ。

そこにはお決まりのストリートアートが散らばっている。
ストリートアートと呼ぶのかすら分からないが、
適当にスプレー缶を振って塗りたくっただけのものにも見える。
彼女はそれが嫌いじゃない。

それらを背に大きな橋柱を見つめていると、
だんだんと引き込まれるように視界が狭まってきて
そのコンクリートのグレーしか見えなくなってくる。
一瞬自分を見失うかのような錯覚に襲われる。

そんな時、風がふく。
目の前をジョギングするおじさんが走り去っていく。
カモのカップルがのんきに横切っていく。
ゴミや浮島が流れていく。
はっと現実に引き戻される。

彼女は橋の下には何か異世界だかの入り口でもあるのではないかと
半ば本気で考えている。
橋の下にはいつでも風が吹いている。
タイミングさえ合えば向こうを少し覗き込むことができるような、
かすかな風がいつでもスタンバイしている。

-彼女の話

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