彼女の話

死人工場

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強烈なタイトルにあまり驚く必要はなくて、
要するに今回の彼女の夢のイメージはこうだ。

ひどく暗い閉鎖的なその場所はほとんどがグレーや黒光り、
はがね色サインペンと墨汁色の水彩絵の具で描かれたような場所であった。
彼女のスケッチブックと似ている。
とても昏い昏い競りが行われるような市場に似た雰囲気である。

ふと目をやると何かが山積みになっている。
暗くてよく見えない。
近づくとたくさんの人の死体が魚の山のように積み重なっている。
その山は彼女の背丈の何倍も高かった。

気が付くと彼女は誰かと一緒に担架を手にしていた。
人を運んでいる。
かろうじて生きているように感じる。
促された場所は大きな鉄の建物の中の一室。
見るといくつかセル状に小部屋が並んでいる。

小部屋に見えたがドアは高い。
入った室内の天井はもっと高かった。
さらに担架の上の人は部屋の半分を占める頑丈で密閉された機械に入れられた。

彼女たちが小部屋を出ると、ドアが閉められ、
どこにあったのか更に大きくて重くて
邪悪な気配のする鉄のドアが引っ張り出され、二重に閉じられた。
それまで音の全くなかったこの場所でその時はドアが響いた。

場面はまた変わり、彼女は自転車に乗っていた。
まるであの場所が職場で仕事を終えて帰宅するところといった様相。

街はどこかの外国のように歩道が広い。
路上に目をやると魚の塊に布がかけられていた。
どうしてこんなところに…に凝視した途端、
それもやはり原型をとどめていないだけの人の体だと気づいた。




頭を抱えながら夢を語る彼女は、
やたらと鮮明な記憶の情景に苦しんでいるようだった。
夢の中では何も「感じて」いなかったように見える彼女だが、
思い出したその夢はひどく気分が悪そうだ。

ちなみに自転車で走った街は
カラフルではないものの多少の色彩があったらしい。

-彼女の話

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