彼女の話

抑圧と創造

投稿日:2016年12月21日 更新日:

彼女にはしばらく絵を描かない時期があった。
描けなかったのか、描こうとしなかったのか、なんとなく理由をつけて描かなかったのか、わからない。

また描き始めたとき、
彼女は以前ももしかしたら描いているようでいなかったのかもしれない、という気がしてきた。
「一体何を描こうとしていたのだろう」
彼女はなにかいいものを描こうとしていた。
自分の中の何かが出てこないようにおしこめておしこめて、
絶対に出てこないようにおしこめて。


今は前より描くのが楽になったような気がしている。
なにかことあるごとにふわふわと手が動く。
彼女は絵を勉強したわけはないので、別にうまくはない。
ただ思いついたところに点を打つ。
画用紙に点を打つごとに描いた点の周りにかすかにインクが染みていくのを確かめる。
ひとつの小さな点が静かに何かの意味を帯びてはじけていく。
それはとても不思議な感覚で彼女を包み込む。


すべてをはきだすために彼女はまだ抱えている。
彼女は慎重で正しくあろうとしている。
まだたくさんのボタンがきちんとかけられているのに彼女は気づいたばかりだ。






-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

彼女の乏しい注意力

彼女を見ていると、ほと集中力がまったくないのがよくわかる。いや、集中力がない、というよりは気が激しく分散していると言った方が正しい。同じことだろうと思われるかもしれないが、例えば本を読む、映画をみる、 …

noimage

とどめようがないこと

暗い気持ちでいることは悪いことじゃない。 みんなポジティブに前向きにって疲れるんだよ。 ネガティブだからダメなんだって、だれが決めたんだろう。 自己啓発本か脳科学か誰かの経験則か。 恨みも怒りも妬みも …

noimage

生活

生活。生活用品。生活費。生活音。生活保護。‥‥生活というだけで候補ワードがズラズラでてくる。生活ってなんだろう。生活という言葉がよく彼女の頭をよぎるようになった。生活、生活、生活…格別意識しているわけ …

noimage

彼女と絵: パウル・クレー

パウル・クレーは彼女が今のところ「いちばん好きだ」という画家だ。 (今のところ、というのは自分はまだ世界中のすべての絵を見たわけではないから、ということだ。)   彼の作品にはたくさんの色を …

noimage

この冬の彼女

訪ねたとき彼女はいなかった。この気温の低い時期、彼女が外出することはほとんどない。一瞬変な感じがしないでもなかったが、そう、彼女は「特に生きたくもないが、死にたくもない」のだ。どこかにいる。 近所をウ …

記事内の彼女の絵や写真。
2020年1月
« 12月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
This error message is only visible to WordPress admins

Error: No connected account.

Please go to the Instagram Feed settings page to connect an account.

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ