彼女の話

彼女と窮屈な箱

投稿日:2016年12月12日 更新日:

これも巨大物恐怖症と同じく彼女の弱点のひとつだが、
大きすぎるものと反対に彼女は狭い空間を嫌がる。
閉所恐怖症だ。

なぜこうなったかは分からないが、
とてもとても小さかったときの彼女はむしろそんな場所が
心地よく好きだったように記憶しているようだ。
それと同時にどこかの押入れの中から泣きながら出てきた、という記憶もあり、
これが原因ではないかと思っている。
(ただしこの記憶は彼女が理由づけのために自分で作りあげたものである可能性がある。)
また彼女は成長するにつれ自由への欲望が増長し、
その中で物質的にも窮屈で動けない環境を嫌いだした、という側面もあるかもしれない。

いちばん良くないのは狭くて暗い場所だ。
カプセルホテルもネットカフェも行ったことがない。
以前に酸素カプセルに入れる機会があったのだが、中を覗いただけで足がすくみ、
緊急脱出の方法など教えてもらってもパニックになって出来そうにないため辞退した。

巨大物恐怖症と違って、狭い空間は意外とある。
トイレだ。

彼女は自分の城のトイレも閉め切らない。
自分以外は誰もいないので、いつも少し開けている。
困るのは職場のトイレで結構狭いのだが、
ここはもちろんドアどころか鍵もきっちり閉めなくてはいけない。
ものすごくアセって出なければいけない、というわけではないのだが、
あまり長くいると圧迫感が襲ってきて良くない。

急がなければいけないトイレは高速バスや飛行機など乗り物系のトイレだ。
一度長時間のフライトで疲れ切っていたこともあってか、
素早く出ることに気を取られて開錠の手順がすっとんでしまい、
「開くはずのドアが開かない!」と思い込み内側からドアを叩いてしまったことがあった。
叩いた先がまさにロック部分、その凸凹で手を痛めたことで我に返った。

今彼女がこの件で一番気にしているのは、自分が死んだときのことである。
死んだら怖いも何も分からないではないかと思われそうだが、
死んだらどうなるかも分からないではないか、と彼女は言いたい。
死んだら何も分からなくなるなどどうして分かるだろう。
棺桶なんかに入れられたら発狂して生き返るかもしれないが、
それも周りが動揺するだろうから、
どうか窮屈な箱に入れることなくそのまま焼いて
灰はこれまた墓の中なんて暗く狭い場所に入れることなく、
できればどこか広くて気持ちがいいところに泳がせてほしいと思っている。

(その時は大きすぎる海ではいけない、ということを留意したい。)

-彼女の話

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