彼女の話

何もない日

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朝早く起きられたということ。
シンとした空気に触れられたこと。
本を読めたこと。
朝食をいつもより多く食べられたこと。
日焼け止めをきちんと塗って外出したこと。

通勤ラッシュの中知らない誰かが車を止めて横断歩道を渡らせてくれたこと。
信号や踏切にあまりひっかからなかったこと。
小さな子どもがまだ短い足で一生懸命歩いていたこと。
母親がその幼い手を横で握っていたこと。

職場でたくさんの人が笑顔であいさつをしてくれたこと。
ささいなことで大笑いし合えたこと。
知りたいことがまだまだたくさんあること。
上司が時間きっかりに上がらせてくれたこと。

日が落ちて涼んだ風が気持ちよかったこと。
作り置きしていたおかずがおいしかったこと。
久しぶりに観た『紅の豚』がやっぱり最高だったこと。
きちんと洗濯を夜のうちに済ませられたこと。

とてもとても疲れてよく眠れそうだということ。


何ものにも心を乱暴に揺さぶれることも
激しく鼓動を打つような事態も、何もない日。
彼女はこんな小さなことをイチイチ記憶に留めて大切に思い返すことができる。
そしてそのことに感謝している。



-彼女の話

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