彼女の話

意味

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3月。
彼女はまた一つ齢を重ねる。

ここ数年の彼女は、誕生日をまたいだ数日間仕事を休むことにしている。
何をする、というわけでもないのだが、
小さな旅行に行くこともあれば、山に登ることもある。

誕生日をまたいで、というところにポイントはある。
彼女は誕生日というよりもその前日前夜、
つまりその「年齢の最後の日」を重んじている。






この一年を自分はどう過ごしただろう。
去年のバースデイ・イブに何を考え、どうありたいと願っただろう。
一年前の今日、自分は幸せだっただろうか。
そして一年後の今日にどんな想像をしていたかしら。


年齢に意味なんてない。
ただその年月肺がふくらみ続けていた、というだけだ。
考えなくちゃいけないのは
いきようとした体に対して、自分はどれだけ呼吸しようと吸い込んできたか。
それなのに世間も自分も肺が膨らんだ回数ばかりに意味付けて決定打を押す。
そして、自らそうしているということもみんなわかってる。
みんな何かでカテゴライズしたいからね。
そうして、安心したい、自分をプッシュしたい、区切りをつけたい、認めてもらいたい。

誕生日が近づいて彼女が感じるのはウェルカムと恐ろしさ。
至って健全だ。
人によってはウェルカムは多少理解しがたいかもしれないが、
彼女は年を追うごとにウェルカム感の方が優位になっている。
齢をとるのは悪いことじゃない。

何もやっていない。
ただベッドに寝転んでうずくまってうじうじしていただけ。
朝になれば糸でひっぱり揚げられる人形のように起き上がって
死んだ魚の目でドアノブを押し下げて出てく。
何年も何年も何年も肺が止まるまで続く。
その殺されている日々に意味がある。
もし意味、と問うなら。

そのただ中に居るときはそれに気付かない。

だって苦しいから。
何もしていないのに苦しいから。
吸い込もうとしなければ苦しくなんてなかったのに。




吸い込む。
肺が膨らむ。
全部自分のなかで起こっていく。

年とる前夜にモノ想うのは怖いから。
またもがく自分が続くから。
ミナモをあっぷあっぷする自分を想像するから。




それをずっとずっと繰り返してきたしこれからも繰り返していく。
自分はどこにいて何をして何を思う何者であるか。
うじうじ繰り返し齢をとる。
そんな次の一年。



-彼女の話

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