彼女の話

そこにこころが

投稿日:

彼女は手紙とかLINEとかメールが苦手だ。
そこに心があるかもと思うと開くのがいつも億劫になる。

彼女は時節のあいさつを大切に思っている人で、
そういう時期になればハガキをだす。
でもお別れの手紙とかお礼の手紙とか謝罪のメールとか
そういったものをもらってもいつもいつまでたっても開かない。

お別れの手紙に書いてあることはまあ大体予想がつくのではないかと思うのだが、
これまでの感謝の気持ちとか健康への気遣いとか今後への激励とか
恐らくはそういったことが書かれているのだ。
別に彼女へ最後の最後に文句が書いてあるとかいうわけではない。

メールを見たとき、彼女はパッと開いて長文と見るともう閉じてしまう。
「ああ、なんだか、なんだろう。なにかたくさん書いてあったな」
と思いながら、仕事でない限りそのまま数日放置してしまったりする。

それが良いことであれ、悪いことであれ、
あまりたくさんの心は受け止められないのである。
たくさんの連なる文字を見たとき、重なる便箋の厚みに触れたとき、
それが書かれた時の感情をも一緒に送られてきたような気がして
単純に彼女はどうしていいか分からず「ああ」と一旦置くしかないのだ。

手紙の場合数日すると、それはきっと悪いものではない、と思い開く。
ちなみにメールの場合はこれに反して「いいことじゃないことが多い」らしく、
それはさらに据え置かれることになってしまう。
カンの良い彼女はなんとなく内容に予測が立ち、
読む前からどんなことを返信したらいいだろうかと憂鬱になったりしている。

手紙やメールは分かりやすい例だが、「こころはどこにでもある」。
そう思うと彼女はどこにいても
膨らみ続けるたくさんの風船に挟まれて押しつぶされるような気分になってくる。
その風船たちはすごく分厚くて強靭で絶対に割れることなく、
いつか自分の臓器のすべてをつぶしにかかってくるような気がしてくるのだ。

-彼女の話

執筆者:

関連記事

ことばのパラレルワールドをいきる2

ことばのパラレルワールドをいきる

「あたまの中で考えているときには言葉を使っていなくてもある程度の、 ”何について、どう思って、だから結論が出ないんだ”、みたいな形があるのに 口で表現してみたとたんまったく別の話みたいになる」 「あれ …

noimage

おばあちゃんズ

彼女は人の話を聞くのが好きだ。 それも自分と全く関係のない人たちの話を聞くのがいい。 彼女がバス停へ向かうとおばあちゃんAが座ってバスを待っていた。 少し離れたところに彼女も腰を下ろした。 その後もう …

彼女のおでかけー駅

彼女のおでかけー駅

彼女が駅をつかうようになったのはごくごく最近のことだ。 彼女が生まれ育った場所には駅はなくほとんど小説の中の想像上の場所だった。 ラピュタみたいなものだった。 今彼女が住む町には駅がある。 ベッドタウ …

noimage

距離

「なぜ自分のものさしだけで私との距離を測るのか」 「ズカズカ入ってこようとするな、理解しようとなんてするな」 「気を遣ったようなフリをして、私のことを分かったような物言いはやめろ」 距離がとりにくい人 …

彼女と大きな存在

彼女と大きな存在

彼女は大きいものをこわがる。 おそらく巨大物恐怖症というやつだと思われるが、一番最初に怖がったものは壁画だった。 小学生の時に学校行事で訪れた公民館に大きなモザイク壁画があり、 振り返った目先に突然現 …

noimage

2020/03/17

意味

noimage

2020/01/31

メロディの輪郭

noimage

2020/01/29

真くろの向こう

記事内の彼女の絵や写真。
2020年9月
« 3月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
This error message is only visible to WordPress admins

Error: No connected account.

Please go to the Instagram Feed settings page to connect an account.

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ