彼女の話

眠れていない日々

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彼女は斜めに映った自分の顔を鏡で見ながら
「齢をとったんだなぁ」と考えていた。
齢をとった、というよりも齢を経た、という自分の顔が
最近はそんなに嫌ではなくなった。
なんという人だったか、早く齢をとりたいと言っていた役者がいた。
齢を経らなければ表現できないこともある。

彼女は色んな意味で女性だ。
人並みにシミやらシワやらたるみやらが気にならないじゃない。
すぐに眉間に力を込めたり噛みしめ癖もあるから、
そこそこ刻み込まれたシワや表情筋の偏りがある。
どこかしらに力がこもっている。
もともと細かった頬は
食べてないからか、若さの弾力ではもうごまかしがきかないのか
一層へこんできた。

昔よりも顔の陰影は増えたのに
それでもふと窓や鏡に映った自分の顔が昔より嫌じゃない。
「落ち着いてきたなぁ」とただ漠然と頭に浮かぶ。
少し浅黒くもなった。

小さな鏡の中に映った顔を見ていたら
彼女は急に鏡の中の人が気の毒になってきた。
あなたはいつもずいぶん窮屈なところにいるわね。

いつの間にか涙を流すその人に彼女は語りかけた。
「大丈夫よ」「あなたには私がいるから」

いつの時代のどんな時も、自分の真のパートナーは自分だ。
いや、自分より自分のソウルメイトや親友を信じてると思っても
そのソウルメイトや親友を信じているのは外ならぬ自分だ。

鏡の中にいるほうが本物。
この子のために自分は外の世界で這って気張って生きてきたんだ。
「あなたは私を責めないのね」

鏡を置いて、彼女は大きく息を吐いた。
眠れていない夜が続いてひどく疲れていると感じた。

-彼女の話

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