彼女の話

恣意的彼女

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あなたは誰かのことをとても知りたい、と思ったことはあるだろうか。

彼女はあまり自分のことを話さない。
話すが好きじゃないのだ。
でも話さないからこそ余計に人は彼女に関心をもってどんな人なのか知ろうとしてくる。
彼女はいつもそれが嫌だ。

どんなに仮面をうまくかぶっているつもりでも、彼女は少し変わっている。
使う言葉や見ているものや視点が他の多くの人と違う。
言葉は特に違う。

たとえば職場で上司に嫌な思いをさせられたら、
気の優しい同僚は大丈夫か、と声をかけてくる。
彼女はそれに「まぁ粘土にでもして置いときますよ」とぽろりといって笑う。

・・・粘土?


子供の頃はこんな表現のオンパレードで、会話にならないことが多かった。
そして彼女にとって問題は粘土ではない。
「置いときますよ」って一体どこに置いておくつもりなのだ、それが問題なのだ。


読んでくれている方は、もうすでに訳が分からないでこのページから去ろうとしているかもしれないし、いやもう粘土時点で去ってしまっているだろう。
失礼な話で申し訳ないが、彼女もきっとそれを望んでいる。
そう、分からなければそれで終わりで、それでいいのだ。

ただしなまじっかそれが職場の人間など毎日会う近しい存在になってしまうと、
中途半端にしかならない理解を示そうと、フラフラした興味をもって質問攻めにしてくる。
「話したってどうせ分からないくせに」
これまで繰り返されてきた必定の結果を想像しながら、彼女は心の中で悪態をついて仮面の口角を上げ相手のいうことに「適当に」答える。


結局人は他人を理解できない、ということは分かっている。
それは彼女が「おかしな」言葉を使うからだけではなくみんなそうなのだ。
だから彼女は自分のことを話さないし、他人にもほとんど興味を示さない。
分かる努力をしようとしない。
知ろうとすることの意味を忘れてしまっている。



恣意的彼女

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