彼女の話

・線アフォーダンス

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腱鞘炎が未だ治まらず点をあまり打たなくなった彼女は以前より線を多く引くようになった。
線を描いているときの彼女はすごく伸び伸びしているように見える。
なんというかもう少し大きなスケッチブックに描いたら?と言いたくなるほど
ぐんぐん鉛筆やボールペンを体ごとゆらゆらさせながら描いているのだ。
実際線はよくスケッチブックからはみ出しているし、
彼女自身スケッチブックをぐるんぐるん、あっちへこっちへ忙しそうに回しながら描いている。


線を描いている彼女は点を打つ彼女よりももっと野性的で本能的だ。


飢えている。


伸び伸びとして自由に見えるのに。
飢えている。


それは点を欲しているのか、色を欲しているのか、他のなにかであるのか。
ひどく乾いた砂漠の上をほんの少しの霧雨が線となって落ちていくように。
はたはたはたはた。
黒鉛が、インクが、墨汁がスケッチブックの上に静かにすべり落ちる。


彼女は必死に線をひく。
蚕が営繭するように。
その細い線で自分の周りを囲おうとするかのように。

-彼女の話

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