彼女の話

橋の上の彼女

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彼女はもう寒さをあまり怖がらなくなっていた。
冷たい北風を愛おしく頬で受け止められるほどに。




今でも冬の朝は起きられない。
コタツと共に生きたいと心から願っている。
それでも一日中とりつかれたようにベッドやコタツに囚われて
ただぼんやりと天井を見つめたまま転がっているということはない。




この一年で、いやもしかしたらこの数年で
彼女の内側にはじわじわとほこりのようなものが舞い上がっている。
僕は思い出す。
彼女が語った多くの夢を。
ヘドロの中でぎりぎり物を食べる彼女を。
そしてキッチンペーパーに残していた絵を。




すべては大げさだ。
水面上で何の気なしに生きている人たちにとっては
なんともオーバーな話や表現ばかりだ。
僕が書いてきた彼女は全部。
落ち着けよって言いたくなる。







それでも今やっぱり彼女の周りにはたくさんのものがまっている。
目には見えない、どこからか始まったひずみ。
ボールがほんの少しの衝撃でいつの間にかあらぬ方へ飛んでいくように、
一粒の滴が思わぬほどの波紋をどこまでも広げるように、
針の先ほどの刺激が生む大きなうねり。




彼女は橋の上から川の上流を眺めていた。
「冬だなぁ。冷たいなぁ」と呟いて笑っていた。




橋の上の彼女
(イワシの群れは小さな異物の乱入で大きくその形を崩す。)

-彼女の話

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