彼女の話

この冬の彼女

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訪ねたとき彼女はいなかった。
この気温の低い時期、彼女が外出することはほとんどない。
一瞬変な感じがしないでもなかったが、
そう、彼女は「特に生きたくもないが、死にたくもない」のだ。
どこかにいる。




近所をウロウロしてみると、向こうの橋の上に彼女がいた。
寒さを極端に嫌う彼女が北風に吹かれて橋の真中に立っていた。
こころなしか上がっているようにも見える口角。




その内彼女は歩き出すと
近くの小さな小さな神社へ吸い込まれるように入っていった。
彼女の城がある土地の氏神だろう。
今はほとんど人がいることはない。




そうこうしているうちに彼女は戻ってきた。
僕が見えていないかのように目の前を通り抜け
そのまますぅっと城のドアに吸い込まれると、
ぱたんと閉めた。

-彼女の話

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