彼女の話

くろくなる光

投稿日:

「白いキャンパスに光を描こうとするとくろくなる」

彼女は自分が塗り上げたその黒さに絶望する。



久しぶりに会った彼女はひどく痩せていた。
まるで地球上の重力すべて集めましたといった重さの鉄板によって
きれいに上からプレスされたかのように彼女はペラペラになって横たわっていた。


僕はその姿をみて、しまったと思った。
彼女はすっかりまた・・・


彼女を断続的に襲うとんでもない孤独と不安。
何が引き金となるのかいつも分からない。
徐々に彼女を蝕んだり、後ろから突然襲ったりする。


こういう時の彼女は僕から見ても彼女と言い難い。
彼女と言葉を交わしていても、違う誰かと話しているようなおかしな感覚に陥ることがある。
それは俗にいう二重人格とかいうものではなく、
彼女が自分自身に対してひどく客観的な他人行儀な彼女になってしまうのである。
それは例えば
”ごはん何を食べたんだい?”と問うて、
「ああ、食べたんだと思うけど、えっと・・・すごく眠いみたいで」
といった端的なものから、
いつもに増して彼女の使う言葉や表現が独特になってしまうこともある。
僕はいちいち頭の中で?を繰り返してしまって会話が苛立たしくならないように気をつけないといけなくなる。
彼女は最初から誰かに理解してもらおうと思って話しているわけではないから
分からないのは当然かもしれないが。


以前彼女はこんな状態の自分を振り返って
頭に一膜かかっているようなのだと話したことがある。
何かが覆っているから、それをズリズリ頭から剥ぎだしてしまえば一気にスッキリしそうな気がするんだけど、と。
膜は頭だけにとどまらず、そのうち彼女の全身を包んでいく。


次に行ったときには彼女の体はひどくしなって、ぐにゃりと腹部だけが沈んでいるようだった。
紙みたいにペラペラのはずなのに覆った膜の重さで城の地下まで突き破っていくかに思えた。


無気力に守られた彼女は、もう起き上がろうともしない。

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

彼女の乏しい注意力

彼女を見ていると、ほと集中力がまったくないのがよくわかる。いや、集中力がない、というよりは気が激しく分散していると言った方が正しい。同じことだろうと思われるかもしれないが、例えば本を読む、映画をみる、 …

noimage

抗えないもの

彼女は自分の体の異変を認めざるを得なくなってきた。 頭痛に悩まされているのは以前からだが、それ以上におかしいのだと呟いた。 少し不安気だった。 朝目が覚めたとき、脳がとけてスライムになったようにドロリ …

noimage

彼女はまた少し小さくなった

彼女はあまり大きくない。 考えることを止めることができないので、そのために四六時中神経をすり減らし、 結果食べても食べてもほとんど太ることができない。   最近彼女はまた少し痩せた。 手首を …

noimage

泥の中に手を

彼女はある夏の日のことを後悔している。 その時彼女はひとりで7時間行程の山登りをした。 山登りといっても山登りとハイキングの間みたいなものだった。 彼女はときどきこうやってひとりで人のいないところへ行 …

noimage

彼女の味覚

彼女は薄口を好む。 なんにしても濃い味付けはあまり受け付けない。 自分で食べるだけの時はほとんど味付けは塩だけで済ませる。 あとの調味料は酢と酒、ごま油が好きだというくらいだろうか。 塩だけで済めばそ …

noimage

2020/03/17

意味

noimage

2020/01/31

メロディの輪郭

noimage

2020/01/29

真くろの向こう

記事内の彼女の絵や写真。
2020年9月
« 3月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
This error message is only visible to WordPress admins

Error: No connected account.

Please go to the Instagram Feed settings page to connect an account.

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ