HSPとその他の話

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僕は図書館にいた。
何とはなしに見上げた棚は医学・心理学・超能力や哲学関係がなどが雑多に並べられていた。
小さな図書館ではよくこういった、とりあえず”あなたの心身に関することの棚です”といったような一角がある。
笑えるくらいに蛮勇をふるった棚のようにも思えるが、
人がみなこれだけコンパクトであればもっと色々簡単なのだろうかとふと思ってしまう。


そしてこういった棚には

”~~する本”
”~~を解き放つ”
”~~がわかる”
”~~を知る”

といったタイトルが多い。
売れるんだろう。
~~事典とかね。

僕はふとぼんやりとそれらの背表紙に目を滑らせながら
一体この中のどれだけが本当で、どれだけの人がその本質を本当に知っているのだろうと考えていた。
こういうことは大きな図書館や情報過多のネット上では気づかない。
正しいことがこの中にあるはずだ、と人は錯覚するからだ。

もちろん書かれていることの多くは本当だろう。
しかしそれは現時点での話だ。

一昔前の研究ではコーヒーは体に良くないとか言われていた。
少し前になるとドリップコーヒーなら良い、みたいなことを言う人が出てきて、
現在ではドリップコーヒーよりも毎日一杯のむしろインスタントコーヒーが一番良いというような話になっていたりするようだ。

例えば自閉症がいわゆる”発見”されてから70年以上になるが、
逆に言えば70年そこらでいろんな人から”症状”とか”概念”とか”療法”とか”名前”まで
ガンガンに訂正されたり修正されたりしている。


その瞬間々々、研究者たちは苦労の末に”これが本当だ”と”思われる”ものを打ち出してきた。
しかし研究とはそういうものだし、分からないから研究してくれているのである。
そしてそれを見聞きした人々はその刹那の事実を永久の真実であると見ようとする。
常に疑問を持とうとする研究者や専門家とは違い、僕らが欲しいのは今手に入る”真実”であるからだ。

もちろん僕は自分を含めたそういう人たちを愚かだなんて言うつもりはない。
今分かったことが永遠の真実かもしれないし、”今わかっていることからできる最良のことをしたい”。
その為にも人は様々なことを様々にラベリングしていく。
もっともらしくしたくなるし、分かりやすい。


”~~を治す”
”~~を解き放つ”
”~~がわかる”
”~~を知る”

”~~”の部分は多くがラベリングされた何かである。
背表紙に書いてあったり、ネットで書かれていたり、アルファベットが並んでいたり、
そして何かと活字になっていると”真実”っぽい感じがする。

”ACからの回復”
”HSPがわかる”
”AD/HDの治療薬”
”HSPを解き放つ”
”HSPを知る”
”ACがわかる”
”HSPを治す”
”ACを解き放つ”


さすがにこんな乱暴なタイトルが並ぶことはないが、
まだあまり知識がない人にとっては迷わず下へ下へスクロールの一途をたどるかもしれない。
”真実”も”誤謬”もごちゃまぜの世界。
もっとも今の時点での真実もあるし、未来では現在の誤りが真実である可能性も否定できない。
だが、一旦ラベリングされたものはなかなか剥がれない”レッテル”にもなりうる。


様々な症状や障害や気質に名前がつくことは必要だ。
しかしそれが誤って氾濫すると、とんだアンチテーゼを生み出す。
ちょうどアダルトチルドレンからアダルトサバイバーという言葉が必要になったように。
理解されやすいように認知されやすいように誤解されないようにしてきた結果、
いつのまにか無数のラベルだけが昂然ともっともらしく歩き出している。
そしてそれらのどこかに自分や他人をはめ込んで。
フォルダにいれカテゴリ分けしていく。


僕が恐れたのはこういうことだった。
だから僕は一人の人間を縦断的に書こうと思ったのだ。

僕がこのブログを始めてまだ2年も経っていないのだが、
その間にHSPという言葉は特にインターネット上で急速に増えた。
僕はパソコンとスマホをかなりきっちり使い分けているのだが、
スマホでHSPの言葉を入力も検索もしたことがないにも関わらずふっと目にすることがあるほどだ。


僕がこのブログの柱にHSPの言葉を入れたのは一つの、彼女の話のきっかけのつもりであったし、
いつまで続けるか分からないけど、これからもそうだろうとも思う。
でも世の中の様々なそして多くの”真実”の中で、僕は彼女がどこにもフォルダリングやカテゴライズされることは望まない。
きちんと考えていかなくちゃと思う。
僕は彼女の表現の数少ないアウトプットの棚であるというだけなのだから。



棚

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