彼女の話

温かみは城の外に

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最近彼女が恋しがっているのが分かる。
彼女はさみしがっている。
誰かにそばにいてほしいと思っているし、
横で寝息が聞こえたら頭痛と共に目が醒めることもなくなるだろうと思っている。


男。
今まで彼女はあまり気づかないようにしていたようだが、
男という存在ほど彼女が求めて恐れる存在もないのではないだろうか。
ひとりが心地いいと言いながら、いや、おそらくそれも事実なのだが、
角度を変えてみればそこには深遠な矛盾が見える。


これまでの半生で彼女はあまりいい男性像を築いてはこれなかったようだ。
今までも機会がなかったわけではないし、
僕がみていても出会いがない、というわけでもない。
いや、むしろ多い方だ。

それでも必ず何かが起こりそうな雰囲気を察すると
(彼女はこういった雰囲気の変化に敏感ですぐに気づく。)
何事も起こさないようにその凪を保とうと静かに距離をとる。
男女問わないが、男には特に顕著だ。
見えない透明のバリケードをひとつずつ隙間なく丁寧に置いていく。


「いてほしい時にいてほしい人がいないのは自分が悪いのだ」
というのは彼女が時々職場で部下の扱いの下手な上司を皮肉っていう言葉だが、
これは彼女の経験から生まれた言葉だ。
寂しくても辛くてもいてほしい時に誰もいない。
それはこれまでそういう関係を築いてこなかった自分が悪いのだ、と


ある男との「不適切な」関係で彼女が”温かみ”に気付いてしまってから
彼女はそれをやめられずにいるし、それを続けられないとも分かっている。
いつかはこれも自分を置いて去っていってしまう関係だと。

ときどき激しい痛みや暗闇に没入してしまったとき、
彼女は誰か助けて、と呟く。
そしてそこから抱え上げてくれるのはこの男ではないと確信する。
そして一層黒い酸素が彼女を包み込んで
雑巾のように締め上げるのを感じるのだ。


彼女は誰を何を求めているのだろう。


確かなことはふたつ。

求めていたって誰もやっては来ない。
城の中では誰からも攻撃されないが、
湧き出る恐怖から乖離させてくれるものもない。

そしてもうひとつは
それを打開するのが”温かみ”なのだ、と彼女が気づいたということ。
城の中が実はとてもひんやりしていると気づいたということ。
寒さは彼女がもっとも嫌うものだと再認識したこと。


僕は彼女のそばにムーミンがいてくれてよかったと思う。
彼女は今はとりあえず彼にしがみつくことができるから。



温かみは城の外に

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