彼女の話

彼女と声

投稿日:

誰にでも何人かはいると思うが、
彼女にも別に悪い人ではないのだろうができれば避けたい人たちがいる。
彼女にとっては特異な声や話し方の持ち主たちだ。


ひとつはとても声が大きい人。
それから声が高い人。
最後にどうにも辟易してしまうのは早口な人だ。
そしてなぜかこれらすべて併せ持った人というのはいるのである。
更にそういう人に限ってとてもおしゃべりが好きだったりするのだ。
彼女じゃなくたって困ってしまうかもしれない。


彼女が時々会う人たちの中にはこれに当てはまる人がふたりいて、
彼女はこの人たちに遭遇するとかなりの確率で頭痛が起こる。
しかも話好きな人たちだから一旦捕まってしまうと離してもらえない。
さらにこっちの言ったことなど全く聞いてなどおらず、
言葉を遮ってその声で畳みかけてくるのだからたまらない。

彼女は頭痛に耐えながら必死で笑顔をこしらえる。
だんだん脳内がプスプスとショートし始め、
次から次へと矢継ぎ早に飛んでくる甲高い声の嵐で
内容など全く理解できなくなってくるのである。
最後には高速で動くマリオネット人形の口をぼんやり眺めている気分になってくる。


困るのは小さな子供だ。
彼女は子供は好きだが、
彼らの興奮の表現手段である大音量の奇声には耐えられないのである。
長い間聞いていなければいけない状況になると、
脳が頭蓋骨の中でグラグラしてきて、まっすぐ立っていられないような気がしてくる。
こんな時、彼女は小さい子供が好きな分だけつらいのである。



彼女は無論大きな音が苦手だ。
しかし声、と言うのは良くも悪くも感情も一緒に吐き出されてくる。
声が高いとか大きいとかは生まれ持ったものだから相手もどうこうできるものではないのだが
話し方、こと早口な人に関してはどんどんどんどん滝のようにその口から
感情が吐露されてくるように彼女には感じられるのだ。

子供の金切り声にしてもそうだ。
彼らはまだ言葉が上手に使えない。
だからできる精いっぱいで怒りも悲しみも嬉しさも表現する。
その小さな体に噴出した情動の詰まった愛すべき金切り声だ。


でも彼女にとってはどちらもあまりに多くなのである。
そんなに力いっぱいぶつけられても動悸や頭痛がしてきて
うまく聞きあしらうことも出来ずに彼女のシャッターは閉めざるを得ない。

彼女はこんな時どうしたらいいのだろうといつも思う。
相手がヒートアップしてくると
突然頭を抱え「お願いだからもうやめて!」と
いつか口から飛び出るのではないかといつも恐れている。

-彼女の話

執筆者:

関連記事

雪の夜

雪の夜

夜道を歩く彼女の前にひとつの雪の塊りが降りてきた。 降ってきたのはたったひとつで、見上げてもそれに続くものはないかに見えた。 たったひとつで降りてきて、寂しかったろうなと思ったものの 宙を舞う小さなゴ …

noimage

探しもの

彼女の同僚の財布が消えた。 帰宅後連絡を受けた彼女は探すのを手伝いに職場に戻った。 見つからなかったらいけないので、失くした彼のために急場しのぎの数万円を財布に入れた。 まずはみんながパニクっているの …

彼の生まれた意味

彼の生まれてきた意味

彼の話には続きがある。 いや、続きというよりもプロローグというべきか。 別にHSPじゃなくたって、 僕らもふと「一体自分は何のために生まれてきたのか」と漠然と思う時はある。 ぜんそくで死んだ彼は生きて …

noimage

彼女とモネ

彼女はモネに対して少し複雑な感情を抱いている。   美術館で著名な画家の絵や有名な作品を見ると彼女はいつも同じことを思う。 全部ニセモノかもな・・・   フランスから初来日した絵だ …

たそがれ

たそがれ

彼女が一日の中で一番すきな時間はたそがれ時だ。 早朝の「キリっとパリッとした空気」も好きだが(彼女は早起きが苦手だし)、 その日一日あつく熱された世界を静かに穏やかに落ち着かせようとするあの時間には変 …

noimage

2019/06/23

6月

noimage

2019/05/18

3月11日-ある春の日

表面下の世界

2019/01/16

表面下の世界

記事内の彼女の絵や写真。
2019年6月
« 5月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ