誰にでも何人かはいると思うが、
彼女にも別に悪い人ではないのだろうができれば避けたい人たちがいる。
彼女にとっては特異な声や話し方の持ち主たちだ。
ひとつはとても声が大きい人。
それから声が高い人。
最後にどうにも辟易してしまうのは早口な人だ。
そしてなぜかこれらすべて併せ持った人というのはいるのである。
更にそういう人に限ってとてもおしゃべりが好きだったりするのだ。
彼女じゃなくたって困ってしまうかもしれない。
彼女が時々会う人たちの中にはこれに当てはまる人がふたりいて、
彼女はこの人たちに遭遇するとかなりの確率で頭痛が起こる。
しかも話好きな人たちだから一旦捕まってしまうと離してもらえない。
さらにこっちの言ったことなど全く聞いてなどおらず、
言葉を遮ってその声で畳みかけてくるのだからたまらない。
彼女は頭痛に耐えながら必死で笑顔をこしらえる。
だんだん脳内がプスプスとショートし始め、
次から次へと矢継ぎ早に飛んでくる甲高い声の嵐で
内容など全く理解できなくなってくるのである。
最後には高速で動くマリオネット人形の口をぼんやり眺めている気分になってくる。
困るのは小さな子供だ。
彼女は子供は好きだが、
彼らの興奮の表現手段である大音量の奇声には耐えられないのである。
長い間聞いていなければいけない状況になると、
脳が頭蓋骨の中でグラグラしてきて、まっすぐ立っていられないような気がしてくる。
こんな時、彼女は小さい子供が好きな分だけつらいのである。
彼女は無論大きな音が苦手だ。
しかし声、と言うのは良くも悪くも感情も一緒に吐き出されてくる。
声が高いとか大きいとかは生まれ持ったものだから相手もどうこうできるものではないのだが
話し方、こと早口な人に関してはどんどんどんどん滝のようにその口から
感情が吐露されてくるように彼女には感じられるのだ。
子供の金切り声にしてもそうだ。
彼らはまだ言葉が上手に使えない。
だからできる精いっぱいで怒りも悲しみも嬉しさも表現する。
その小さな体に噴出した情動の詰まった愛すべき金切り声だ。
でも彼女にとってはどちらもあまりに多くなのである。
そんなに力いっぱいぶつけられても動悸や頭痛がしてきて
うまく聞きあしらうことも出来ずに彼女のシャッターは閉めざるを得ない。
彼女はこんな時どうしたらいいのだろうといつも思う。
相手がヒートアップしてくると
突然頭を抱え「お願いだからもうやめて!」と
いつか口から飛び出るのではないかといつも恐れている。
彼女と声
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執筆者:Me