彼女の話

知ること

投稿日:2017年2月11日 更新日:

彼女はいつも何かを考えている。
「考える」とは一見思慮深く大切なことのように思えるがなにごともやりすぎはよくない。

彼女は考えることを止めることができない。


ひとは脳で「考える」。
「考える」と感情がうごく。
感情がうごくと生理的に体が反応する。
おでこに力が入ったり、顎に力が入ったりして。

どこかでやめないとあたまもこころもからだも疲弊していく。
それなのに彼女は目が醒めて意識が眠りに落ちていくまで、もしかしたらそのあとも考え続けている。
一体何についてそんなに考えているのか。


誰かと話をしているときもあるという。
正確に言うと、誰かに彼女が一方的にただ話し続けているだけのようなのだが、
誰に話しかけているかはわかるときもあるし、知らない誰かのときもある。
妄想みたいなものかもしれない。

どちらにせよ、彼女は思考し想像しつづける。


彼女を苦しめていたのは、答えが出ない疑問の数々でも虚実のあわいについてでもない。
彼女が苦しんでいたのは、自分は考えを止めることができないという事実それこそだった。

ある日彼女は、自分が考えることをやめられないのは生まれつきだと知った。
それは彼女の目や髪の毛がまっくろだということや、足が短いということと同じように変えようがない先天的ものだと知った。
それまでどうにか思考をストップさせようと無理矢理にヘヴィーな運動をして疲れ果ててしまったり、巷に出回っている自己啓発本を立ち読みして気分が悪くなったり、一日中スケジュールでいっぱいにして考える暇を作らないように忙しくしまくった挙句吐いたりしたのも
笑えるくらい自然に反していたのだと知った。


それをきっかけに彼女は少し楽になった。
それまで自分はなんの生産性も役にも立たないことを考えて、ああなんてくだらないんだろうと、時間も労力も無駄だとなんとかムリに止めようとしていたが、
そんな努力こそ効力はないのだから、自然と落ち着くまで考え続けようと腹をくくった。
おかげで、考える→止めたい→止められない→苦悩→また考える、の負のスパイラルが
考える→考える→考える→考える→・・・のシンプルな構図に変わった。


彼女はいつだって人を苦しめるのも楽にするのも目の前にある現実で意識で知識でそれを自分が知ることだ、と
そう気づけた今の自分はとてもラッキーだと思っている。


知ること

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