彼女の話

彼女と税金

投稿日:2017年8月15日 更新日:

彼女は別に貧乏ではないがお金持ちでもない。
大体は根っからの倹約家であるため、ムダにお金を使うこともないが、
かといってその時に必要だと思えば大枚をはたくこともあまりいとわない。


この間のように2か月もまともに仕事をしないダウンタイムがあると、
収入は激減するため生活費は貯蓄から一部補填されていた。
しかしそれはそれで構わない。
彼女にとっては仕事に生活を占領されないことのほうが大切だ。
お金はあるに越したことはないかもしれないが、お金持ちであるより豊かであればいいと思っている。
普段は倹約生活も甘んじて受け入れるのは
勉強したいとか旅行に行きたいとか思ったその時にそうできる余裕は持っていたいからだ。
ダウンタイムもそのひとつだ。


しかし彼女は最近突然現実を突きつけられた。
税金やら何やらで国に取られていくお金が月に10万近くまでなったのである。
新年度になってから毎月じわじわと増えていく恒例の負担だが、
彼女の家計簿をつける手が止まった。
あれ・・・?

彼女は近い内に引っ越しや携帯の機種替えも考えているし新たに勉強したいこともある。
それらが一気にグレー色に変わってきたような気がした。
お金がないわけではないが、使えるお金がないようなのだ。
これでは何のために働いているのか分からないなぁと
彼女も世間一般と同じことを思って頭を抱えた。

結局彼女にできることはふるさと納税することくらいしか思いつかなかったが、
それも新たな試みだし、来年は少し変わるかもしれない、と期待することにした。


それにしても絶対に逃げられないのは人付き合いより孤独より税金であることよなぁとおかしくなった。
それからふと、ある日に高架下で雨を凌いでいた土色に日焼けした老人を思い出した。
彼は腕を組み雨降る空を見上げていた。
大量の空き缶が入った大きな袋がいくつかと、生活用品が詰められているのであろうスーパーの袋と
錆びだらけに見える自転車がバリケードのように彼を囲んで守っていた。

どうして今彼を思い出したのか分からなかったが、
彼女はその時彼を見て決して心痛めたりはしなかった。
憐れんだり同情心なども生まれなかった。
気の毒に思ったりもしなかった。
そうでなければあの時空を見上げる彼の顔を直視したりはしなかっただろう。
もし目があえば微笑んだかもしれない。

仕事と時間とお金とルールと孤独と自由と。
あのバリケードの中にはそんなものは何もなかったように思った。
彼女はふっと笑って、
しかし自分はもうしばらく国というケージの中で飼われているしかないのだろうなぁと思った。

-彼女の話

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