彼女の話

彼女のおでかけー駅

投稿日:

彼女が駅をつかうようになったのはごくごく最近のことだ。
彼女が生まれ育った場所には駅はなくほとんど小説の中の想像上の場所だった。
ラピュタみたいなものだった。


今彼女が住む町には駅がある。
ベッドタウンの最寄り駅のわりに小さな駅だ。
駅は彼女のそれまでのイメージと違った。


彼女はみんなが行く上りよりも下りの電車に乗ることが多い。

みんなとは逆のプラットホームに立つ。


彼女が行くその場所はいつも人がいなくてガラガラなのに
彼女は改札を抜けると緊張する。

ホームはステージだからだ。


いつも思う。


下り線のプラットホームに立った時、レールを挟んで向こう側には
いつもたくさんの人がいる。
反して彼女が立つホームには彼女のほかにひとりかふたり。
それはまるで劇場やホールのステージと観客席のようなのだ。


彼女は少し離れたところにいる共演者に目をやる。
いつなんどきも80%を超える確率で彼らはスマホに目をやっている。
彼女には目もくれない。

彼女はおずおずとベンチに腰をかける。
向かい側の観客達を見ないふりをする。
彼らはカボチャでイモだ・・・!


一瞬目をやるとなぜか向こう側の人間に限ってスマホをあまり見ていないような気がする。
それよりも面白い何かがステージ上にあるかのようにこちら側をみている。
彼女はその凝視を意識する自分に気付く。


そしてまっすぐに前を向く。


駅はステージだ。
彼女の中で今駅はラピュタではなくステージになっている。



彼女のおでかけー駅

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

彼女が人を殺した朝

彼女はひどく青白い顔をして落ち着かない様子で言った。 「人を殺した」 僕は何をバカなことを、と一蹴しかけたのだが、 彼女のあまりにおびえた様子に少し動揺してしまった。 とにかく 彼女は人を殺したと言っ …

noimage

彼女はあんまり神様は信じていない。 いや、正確に言えば都合のいい時だけ頼っている存在があるにはある。 そんなときに「ああ、神様お願いです」と思ったりするけれど、 それがいわゆる神社や教会によくいる神様 …

noimage

彼女はそんなふうにできている

彼女は自分は風邪をひかないと思っている。 はっきり言って彼女がそう妄信する根拠は何もないのだが、 強いて言えば彼女の体温が高い、ということはあるかもしれない。 37度ある日もざらで、 検診などで毎度微 …

noimage

彼女と飲み会

昨夜は彼女の職場の飲み会があった。   彼女はいつだってできるだけ早く自分の城に帰りたいと思っているし、 何より人と長い時間接しているのが苦手だ。 彼女は飲み会が好きじゃない。 しかも一日中 …

noimage

暖房便座と彼女の熱量

彼女はフローリングの床の上に文字通り転がっていた。 「真冬の立体駐車場のコンクリートの上に転がっているみたいだ」と呟いた。 「今日はすごく寒いね」 真夏ほどではないにしても外気温はまだ30度近くある。 …

優しい時間

2018/10/19

優しい時間

noimage

2018/09/18

アンビバレンス3

棚

2018/08/29

記事内の彼女の絵や写真。
2018年10月
« 9月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ