彼女の話

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彼女は何の音もない世界にいるのが好きだ。
城の中は空気も動かないような静けさが横たわっている。
そんな時彼女は「ああ、なんて静かなんだろう」とその静謐に耳を傾ける。


嫌いな音が多い。

改造車やバイクのあの喉の奥に重くのしかかってくるような
ドォンとか「ブドンブドン」とかいうエンジン音は彼女の一番嫌うところだ。
それから隣人の生活音やぼそぼそ聞こえてしまう話声。
閉め足りなくて、ぽちゃんぽちゃんシンクを叩き続ける蛇口のしずく音。
どれも気が狂いそうになる。
いつもは聞こえてこないはずの雑音や機械の故障などのおかしな音も気になって仕方ない。


救急車のサイレンの音には反応する。
あの白い箱の中で起こっていることを想像して
「あまりひどくありませんように」と音を耳にする度いつも祈っている。


彼女は音楽を聴くのは好きだ。

音楽をかけるときは多くの人と同じように
大抵そういった気分になる必要であることが多い。
たとえば仕事に行く前、元気が出る音楽を聴く、とか
外から帰ってきたときの緊張と興奮のせいで
いつもの静けさに溶け込めない時に聴くやさしい音楽とか。
今の気持ちを代弁してくれる歌詞を求めて、とか。

音楽はいつも彼女を助けてくれる。
彼女がひとりでいることができるのも音楽のおかげであるところが大きい。


彼女にとって音ほど好き嫌いが激しいものもあまりない、と思う。
光とか味とかアートとかは別に興味がなくても不快感、とまではいかないのである。
「おう、そういうものがあるのか、あまり好きではないけれど」で留まる。


決して受け入れられないことがある、という点で
音は人間に近い、と彼女は言う。



-彼女の話

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