彼女の話

箱の中の

投稿日:

彼女はKと箱の中に居るときいつも不思議に眠くなるという。
そして何も感じなくなるのだと。



Kは彼女が唯一長い間接触している心理士だ。
Kは心理士としては時として少ししゃべりすぎるというきらいはあるようだが、
ベテランで経験も豊富な人物である。


彼女はKに定期的に会っているわけではない。
会っても何も話していないということもある。
ふたりでいて何もしゃべらない。


Kの部屋には黄色い絵がかかっているらしい。
どこかの街角の2風景を切り取って描かれたような連作で
全体的にとにかく黄色く、連作のうちの一つは軒先の階段の手すりが描かれている。
彼女はいつもいつの間にかその灰色の手すりと黄色をずっと見ている。
そしてだんだん何も感じなくなる。


Kがどんな人かときいても、彼女は覚えていないと言う。
髪の毛が長いとか、色白だとか、背が低いとか、
そういった一般的な外見の特徴も何度何度も会っているのに覚えていないと言う。


箱の中の彼女はKをみていない。
話しているときも話していない時もずっと黄色い壁の絵をぼんやり眺めて。
Kの目を見たことは一度もないと言う。


いや、目を合わせたことはあるのかもしれないが
それが”彼女”かは分からない。

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

(no title4)

彼女の絵

彼女の絵

彼女は昔はわりと見やすい、というか「理解しやすい」点描画をよく描いていた。 白黒の世界をとても愛し、白い紙に黒い点々を延々と描いていた。 花とか赤ん坊の顔とか自分の手とか壁にかかった白いシャツとか。 …

noimage

彼女の城

彼女は家をとてもとても愛する。 仕事に行っても友達と会っても、出来るだけ早くこの場所に戻りたいといつも願っている。 ロフト付き1Kが彼女の縄張り、彼女の城。   彼女は最近DIYにハマってい …

彼女のカーテン

彼女のカーテン

彼女の部屋のカーテンは大体いつも閉じられている。   彼女の瞳の色は普通のひとより真っ黒だ。 髪の色も真っ黒だが、たぶん瞳はもっと黒い。 でも彼女は眩しく明るい場所が好きじゃない。 年を経て …

noimage

朝目覚めたときの彼女

彼女の状態は朝目が覚めたときに分かる。 意識が覚醒した時、最初に感じたのが今現在の彼女の健康状態に一番近い。 最近の彼女のスケジュールは毎日毎時間ギチギチに詰まっている。 今何事かを成しながら常に数時 …

優しい時間

2018/10/19

優しい時間

noimage

2018/09/18

アンビバレンス3

棚

2018/08/29

記事内の彼女の絵や写真。
2018年10月
« 9月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ