彼女の話

箱の中の

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彼女はKと箱の中に居るときいつも不思議に眠くなるという。
そして何も感じなくなるのだと。



Kは彼女が唯一長い間接触している心理士だ。
Kは心理士としては時として少ししゃべりすぎるというきらいはあるようだが、
ベテランで経験も豊富な人物である。


彼女はKに定期的に会っているわけではない。
会っても何も話していないということもある。
ふたりでいて何もしゃべらない。


Kの部屋には黄色い絵がかかっているらしい。
どこかの街角の2風景を切り取って描かれたような連作で
全体的にとにかく黄色く、連作のうちの一つは軒先の階段の手すりが描かれている。
彼女はいつもいつの間にかその灰色の手すりと黄色をずっと見ている。
そしてだんだん何も感じなくなる。


Kがどんな人かときいても、彼女は覚えていないと言う。
髪の毛が長いとか、色白だとか、背が低いとか、
そういった一般的な外見の特徴も何度何度も会っているのに覚えていないと言う。


箱の中の彼女はKをみていない。
話しているときも話していない時もずっと黄色い壁の絵をぼんやり眺めて。
Kの目を見たことは一度もないと言う。


いや、目を合わせたことはあるのかもしれないが
それが”彼女”かは分からない。

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