彼女の話

におい

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彼女の鼻は大抵詰まっている。
なので匂いにはそんなに敏感ではないはずなのだが、
そんな時でもやたらと気になる匂いというのがいくつかある。

まず決して受けつけないのはタバコの臭いだ。
これはいついかなる時でも嫌悪感を隠せない。
居酒屋の類に行けば絶対に嗅ぐことになるので、それも飲みに行くのが苦痛な大きな理由のひとつだ。
髪や服についた煙たさを取るために寝る前のシャワーとファブリーズしゅっしゅっは欠かせない。
歩きたばこも最悪だ。
前を歩く人が吸っていると、風向きによってはその後をずっとわざわざ息を止めて歩かなければならない。
彼女は足が短いので追い越すには走るしかない。

それから食べ物の匂い。
食事を作るときは必ずクローゼットを閉める。
担々麺とかおでんとかの匂いは食べ終わった後もいつまでもいつまでもひどく残ってしまうことが多い。
彼女はそんな匂いが残ったままの部屋で本を読んだり眠ったりすることができない。
一度匂いを消そうとアロマオイルを焚いてみたりしたが、匂いが混じって何が何だか分からなくなり気分が悪くなってしまった。
寒い時期はただでさえ部屋の換気を嫌がるので、冬はそもそもそういう匂いの強いものを食べないようにしている。

困るのは牛乳なんかの匂いが悪くなっていると言うことがあるのだが、
そんな匂いはしないし、口にしても別段悪くなってなどいないのである。
それでも彼女はどうしてもその酸っぱい匂いが不快なようなので、
賞味期限も量も余裕があるのに捨ててしまわなければならないことが時々ある。
どうもここまで過敏になるのは体調にもよるようだ。


香水もあまり好きではない。
自分もつけることはないし、まれにいい匂いをさせている人もいるが、
ほとんどはあまり近づきたがらない。
バスの中などの密室でつけている人に出くわしたときはなかなか苦労する。
少し香っているだけなのかもしれないが、やたらと気になって鼻がもげそうな思いで鼻にハンカチを当てる。

花の香りも好きではないが、これは積極的に近づかない限り安全だし、
鼻が詰まっていると匂ってこないことも多いのであまり気にならない。


こんな風に敏感だとなかなか不便が多そうだと思うのだが、
当の彼女は、高いアロマオイルを焚くときは人より少量で済むし、
香水や花束を欲しがることもないので自分はなかなか経済的だと思っていたりする。

-彼女の話

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