彼女の話

たくさんの小さなうれしいこと

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朝、静かに降る雨のおかげで
彼女はとても落ち着いた気持ちで目を覚ますことができた。

外出先のお店で、この間まで体調不良を訴えていた店員さんが
病院で薬をもらってすっかり元気になっていた。

家に帰ったとき、お店に傘を忘れていることを
この時の店員さんがわざわざ連絡してきてくれた。

束の間、晴れ間をのぞかせた午後、
雨に濡れてキラキラ光る桜と目が合った。

家族のことやPTAのこと、GWの計画のことなどを毎日一生懸命こなしている
勤め先のパートさんはかっこいい。

会社を退勤するとき、まだものすごく忙しいはずの上司が
慌てるように彼女を呼び止め、雨は大丈夫かひどく降っていないかと声をかけてくれた。

大好きな海鮮丼がスーパーで半額になっていた。

ひどく疲れているような気がして、珍しく誰かと話したいと思っていると
タイムリーに友人からメッセージがきた。


普段気づいていないだけかもしれないけれど、
彼女は思えばこの日は小さな嬉しいことがたくさんあったなと振り返っていた。
そしてそれらの多くは誰かと接したことによるものだったということにきづいた。
いつしか面倒ごとしか持ってこないと思っていた他人が
こんなにもちょこちょこ幸せを運んでくれたということにきづいた。

彼女は自分を恥ずかしくも思ったし、照れくさくなった。



たくさんの小さなうれしいこと

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