彼女の話

どうしようもないこと

投稿日:2017年2月26日 更新日:

昨夜から彼女は貝になってしまった。
何も話さず、ただ海に中にいるみたいに顔がびしゃびしゃになっていた。
酸素を取り入れようとするけどうまくかない、といったように
ときどきゲホゲホと咳き込んだ。

すごく眠そうにしていたからすぐ眠るだろうと思っていたが、
布団に入っても2時間以上ゲホゲホいいながら鼻をすすっていた。
僕は久しく渡すことのなかった安定剤を渡した。
すごく小さい錠剤だからときどき奥歯とほっぺたの間に挟まったままになったりするので、
きちんと飲み込んだか訊いたが、
彼女は死んだ魚の目をさせて静かにふとんに戻っていった。
彼女の真っ黒な瞳がすべてをどこまでも吸い込んでいくブラックホールみたいに見えた。

僕は帰ることにした。


今朝見た彼女の目は真っ赤に腫れていた。
顔を洗って化粧水が凍みるたびに苦痛に顔をゆがませた。

とにかく何か食べさせないといけない。
買ってきた彼女のお気に入りのくるみパンをトーストしてコーヒーと一緒に渡すと食べた。
昼は食べなかった。

ずっと何かにとりつかれたように頭をゆらゆらさせながらどこか他の国だか世界だかにいっているみたいだった。
ときどき頭を振ったり、静かに涙を流したり、重い頭を必死で支えようとしていた


僕は帰ることにした。
どうしていいかわからないし。
夜は食べたか分からないけど。


でもスケッチブックを取り出していたから、きっと大丈夫だと思うんだよね。



どうしようもないこと

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

サンタマリア号

(※映画『トゥルーマンショー(The Truman Show/1998)』よりネタバレ注意) 自分が一体どこから来て、何者になっていき、どこへ行くのか。 到底答えが出そうもないこのテーマについていつの …

noimage

彼女と飲み会

昨夜は彼女の職場の飲み会があった。   彼女はいつだってできるだけ早く自分の城に帰りたいと思っているし、 何より人と長い時間接しているのが苦手だ。 彼女は飲み会が好きじゃない。 しかも一日中 …

彼女と車

彼女と車

彼女は車の運転ができない。 免許を持っていないのだ。 今まで、ないならないでどうにかなるものでさして困ったことはなかったのだが 最近彼女はそろそろ免許をとろうか、と考えている。   運転しな …

noimage

そこにこころが

彼女は手紙とかLINEとかメールが苦手だ。 そこに心があるかもと思うと開くのがいつも億劫になる。 彼女は時節のあいさつを大切に思っている人で、 そういう時期になればハガキをだす。 でもお別れの手紙とか …

noimage

彼女の影

最近ある人が鼻について小さなイライラになっている。 でもイライラしているのはその人にではなく自分自身にだと彼女は毎晩気づく。 職場で会うMはどうも要領が悪い。 その上機敏にも動けず、気が利かない。 声 …

PREV
痛み
NEXT
彼女の恥
記事内の彼女の絵や写真。
2019年9月
« 8月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ