彼女の話

彼女の影

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最近ある人が鼻について小さなイライラになっている。
でもイライラしているのはその人にではなく自分自身にだと彼女は毎晩気づく。


職場で会うMはどうも要領が悪い。
その上機敏にも動けず、気が利かない。
声だけはやたら大きくて、自己正当化ばかり目立つ。
その上自信がなく、いつも自分がやっていることに不安をもつ心配性。
みんなにどうしたって白い目で見られてしまっている。

彼女もはじめからこのMの特に主体性のなさに辟易してしまったひとりだ。
自分で考えて自分で判断し自分で動く、ということが社会人としてそれなりの年月を経てきたはずなのにできない。
質問ばかりが目立つ。


周りからMへのひどい評価を聞くたびに、まったくもってその通りだ、と思うのだが、
Mと一対一で話をしてみると、MはMなりにそれらの評価を受け止めていて、
申し訳なさそうにしているのである。
人の感情に影響されやすい彼女は、Mと話すたびに「この人はこの人で悪い人ではないのだがなぁ」と
毎度複雑な気持ちになる。


だからこそ彼女はMにもっとうまく立ち回ってほしいのだ。
Mが失敗するたびに彼女も心の中で舌打ちをして、アドバイス気取って助言してしまったりする。
そしてそれを彼女は毎晩思い出して後悔しているのだ。
一体自分は何様のつもりだったのだ、偉そうに、と。

別に助言することは悪いことではない。
言わなければ気づいていないこともある。
ただそれが純粋にMのためとかみんなのためとかいう思いやりから来ているものではないから彼女は気持ちが悪いのだ。
それは単なる自分のエゴだ、それが気持ち悪いのだ。
それが恥ずかしくてたまらないのだ。


そして彼女はMがうまく立ち回れない理由を知っている。
Mはおそらく彼女と同じ気質をもっていて、彼女と同じでエゴが強く、
どうにも苦しく空回りしているのだ。
事実、Mのしでかす失敗はどれも気の緩んだ彼女もやってしまいそうなことばかりだ。
彼女はまるで仮面を外した自分の姿を間近で直視しているようでMと関わるのが嫌なのだ。
Mをみていると、自分の仮面の裏からひっそりと覗く影が見えるような気がするのだ。

-彼女の話

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