彼の話には続きがある。
いや、続きというよりもプロローグというべきか。
別にHSPじゃなくたって、
僕らもふと「一体自分は何のために生まれてきたのか」と漠然と思う時はある。
ぜんそくで死んだ彼は生きている間、どんなことを考えていたのだろうか。
彼は5人兄弟の次男坊だった。
兄弟はそれぞれがかなり不仲だったというが、
彼がまともに生活し始めてしばらくした頃、
5人兄弟が約20年ぶりに一堂に会する機会があった。
そしてその時彼らは驚くほどに仲良く会話や酒を交わしたそうだ。
彼が亡くなったのはその少し後だった。
残された兄弟たちは、根拠はないが5人を仲良く再会させてくれたのは
この次男坊の彼だったのではないかと感じたという。
これは彼女の勝手な想像だが
(こんなことを言ったら亡くなった人にすごく失礼かもしれないけれど)
生きていた頃、ハチャメチャやっていた彼は
『一体俺は何をやってんだろうな』とか
『なんで生きてんだろうな』とか思ったことがあったんじゃないか。
彼じゃなくたって誰にだってあるんだから。
HSPはよく答えの出ないことを考えて続けている。
人とは、とか
社会とは、とか
生きる意味、とか
存在意義、とか
感情レギュレーターについて、とか。
それから自分が生まれた理由、とか、
彼女は今回の話を聞いて、生まれる理由ってあるのかもしれないな、と思った。
使命とまで言わずとも、少なくとも全く何の意味もございません、
というわけでもなさそうだ、と思った。
彼女は、亡くなった瞬間彼はそのことを知ることができただろうか、と考えている。
そうだったらいいなと願っている。
どうしようもないことも全てが空しくなった時があったかもしれなくても
それがどこかにかつながっているかもしれないことを、彼が思ったならいい。
そしてその残り火がまったく見ず知らずの彼女に希望を与えたということも。
彼の生まれてきた意味
投稿日:2017年6月4日 更新日:
執筆者:Me