彼女の話

彼女のペルソナ

投稿日:2016年11月22日 更新日:

彼女は「いつも100匹くらい猫かぶって生きてるから」と少し自虐的に笑う。

相手によっては「200匹になったり、10匹くらいになったりする」らしく

見ていても彼女はかなりうまく「猫をかぶって」いる。女優かと思うほど。

 

この社会ではみんな無意識のうちに仮面をつけて生きている。

彼女が違うのは自分のそれをいつもとても意識して生活している、ということだ。

自分が今からどのペルソナをかぶってどう振る舞うのか頭の中でイメージして出かけていき、

そこであるべき自分をそのように振る舞い、ひとりになれる場所があれば

「ペルソナの色は褪せていないか、はがれそうになっているところはないか、うまくやれているか」内観する。

(ちなみに彼女は「猫の毛が抜けすぎているところはないか、きちんとすっぽりかぶれているか」といった言い方もする。)

 

彼女のペルソナはかなり強固に貼り付けられているが、

稀にそれが剥がれそうな事態がおこると、実際に彼女は顔の端々に手をあててぺたぺたと両面テープで補修するかのようなしぐさをして自分から離れていきそうになっているペルソナをとどめおく。

この顔の端々に手を当てる、という動きは「ああ、アセったアセった、落ち着こう」といった動きに似ているので、うっかり人がいるところでやってしまってもあまり気にされないようだが、

「うっかり」やってしまうところはペルソナが剥がれかけている証拠でもあることを彼女はその時も自覚している。

 

一日の内で特に重要なことは城にたどり着いたとき、

彼女が「意識しながら」すべての仮面をはずす、という行為だ。

「自分に戻ってもよい」、と確認しながらはずすこと。

 

彼女が恐れているのは適切でない場所で時間でペルソナが強制的暴力的に剥がされるような状況になること。

(彼女は「もし外でそんなことになってしまったら接着剤と一緒に目とか口とかの顔のパーツもみんなもひっぺがされてのっぺらぼうになってしまうのではないか。仮面は接着剤でくっければいいけど、目や鼻はそんなことでは戻らないだろうからそういう意味でもこんな事態はあってはならない。」と思っている。)

 

そして少し心を痛めているのは、

仮面をつけるのを忘れてしまえるほど感情を揺さぶられたことがないということ。

それがいつ、どこであっても自然と顔に手が伸びて、無意識に自ら仮面を外してしまうような、

そんな気持ちに出会ったことがない、ということ。

 

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