彼女の話

数字と中学生と彼女

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彼女は数字が大嫌いだ。


彼女は最近期末テストを間近に控えた中学生と話すことがあった。
この中学生の直近の問題は試験初日の数学だそうで彼女は気の毒で仕方がなかった。

聞けばこの子はもう数学教師がもはや日本語をしゃべっているとは思われず、
一体何の話をしているのだかサッパリ分からないらしく、
それはまさしく彼女が中学生の頃の自分と話しているかのような錯覚を覚えるほどに共感する訴えであった。


彼女の数字嫌いがピークに達したのは高校生の頃で、
試験の度に彼女は激しい憎悪に襲われた。
ある時は学校への放火を真剣に考え、またある時は爆破予告のFAX送信の文言に頭を悩ませた。
賢い人はそんな暇があったのなら勉強すれば良かったのにと言うかもしれないが、
彼女はすでに小学生の折、少数の割り算で躓いたのである。
そこからずっと分かっていないのだからそこに高校数学の勉強をしろと言われても無理な話なのである。

そんな話をこの中学生にすると、この子は目を輝かせてすごくすごく分かります!と言ってくれた。
ますますこの子がかわいそうになった。
この子の代わりに内緒で今こそあの時の爆破予告シナリオを決行する時ではないだろうかと思うほどに同情した。
少数の割り算以前で数字の世界が止まっていたとしても社会には出て行けるのである。
それなのに一体誰にこの子に数学の試験なんぞを強いる権利があるのだろうか、いや、ない!!
彼女は断固としてそう主張したかった。


でも前途多望な中学生にそんなことは言えない。
彼女にしても未だに数字は嫌いだが、数字が作り出す美しい世界があることも今は知っている。
何がいつどう化学反応を起こしてこの中学生に影響を与えるか分からない。
「早く大人になるんだ。大人数学ないよ。それだけで大人になって幸せだなって思えるよ。そうしたら数字の違う姿も見られるかもよ」と伝えた。
中学生は嬉しそうに声に出して笑った。


この子は女の子で平均的な中学生よりもずっと小さな体で
何度聞いても覚えられない名前の巨大な楽器を抱えて毎日吹奏楽部で練習をしている。
そしてそれもとても素敵なことだ。
万が一今後数字とうまい関係が築けなくてもこの事実があればそれでも十分なのだ、と彼女は伝えたいと思っている。



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