彼女の話

ナンバーワン

投稿日:

あなたは誰かのナンバーワンだろうか。
またはあなたにとってナンバーワンだと思える人はいるだろうか。
彼女はそんな誰かを失った。


友人Nは彼女にとってナンバーワンだった。
ナンバーワンはオンリーワンだ。
事実はどうあれ、Nも自分のことを1番に思ってくれている、とどこかで思っていた。

Nの結婚が決まって以来、彼女はNに会っていなかったのだが、
最近やっと会うことができた。
Nはそれなりに大変そうだが、とても幸せそうだったという。

同時にそれほど何も変わっていないように思えるNを見て、
彼女はどうも自分が知らない人間といるような奇妙な感覚が拭えなかった。
Nの顔を見ていると、パウル・クレーが描くような四角い顔になったり、
雲が作り出すパレイドリアになったりした。

Nが結婚が決まった幸せボケで性格が豹変してしまったわけでは決してない。
これは彼女が受信した感覚でしかない。


彼女がNにとってナンバーワンだと本気で思っていたわけでもない。
ただ、彼女にとってNは唯一身内のような存在だった。
それが、そうではなくなった、ということなのだろう。
いつも自分を1番に助けてくれようとしてくれていた人が、
そうできなくなる。しなくなる。

離れて過ごしていても、なんとなく気づいていたが、
目の当たりにすると寂しさや色んな意味の小さな嫉妬とともに
彼女は自分を見失った。
「今自分は誰の何なのか。」


Nにとって彼女が1番でなくなったとして、
どうして彼女にとっての1番もNでなくなってしまったのだろう。

たぶん、「Nが1番でなくなってしまった」のではなくて
”1番にしないように”しようとしているのだ。
依存しては相手も自分も困るだけだ。

困ったり傷ついたりするくらいなら、最初から距離をとっていた方がいい。
これは彼女が今までずっとずっとずっと繰り返してきた人との付き合い方だ。
僕は彼女がNに対してこの姿勢をとるとはよもや思ってもいなかった。
Nは彼女にとって唯一社会的精神的に絶対に必要な人であったから。
誤解を恐れず言うならば身内がいない彼女にとって、これは自傷行為にも思える。

彼女はこの辺がうまくできない。
まだ0か100でしか人と接することができないのだ。


彼女は急激に体調を崩し、一刻も早く城に戻りたがった。
Nの外出中に帰ってきてしまった。
そこにそのままいれば何かが元に戻らなくなってしまうようでたまらなった。
城に戻って彼女はしばらく胸やけを訴え、
その炎を吐き出すように動物みたいに低く唸り続けていた。
人間であろうと必死に留まろうとしているようだった。


こういう出来事は城の外への恐怖を強化させてしまう。
彼女はまたしばらく冬眠してしまうかもしれない。
誰かにとっての、自分にとってのナンバーワンを求めながら。



ナンバーワン

-彼女の話

執筆者:

関連記事

彼女と酒

彼女と酒

彼女は酒が好きだ。 飲み会は嫌いだが、ひとりで飲むのはとても好きだ。 昔は平日も仕事の後の楽しみに発泡酒を1本飲んでいたが、 知り合いにノンアルコールをすすめられて以来、平日はALL FREEで事足り …

noimage

飲み込んだ空気の行きついた先は

その先は呑気症だった。 最近急に涼しくなって人々が生き生きしている。 ある朝彼女は目を覚まし起き上がってテラスのドアを開けた。 瞬間ぶわぁっとあの懐かしいひんやりと乾いた空気が彼女を一気に包み込んだ。 …

彼女とテレビ

彼女とテレビ

彼女はほとんどテレビを観ない。 唯一続けて毎週観ているのはイッテQで、出演者はみんな好きだが、 特に「イモトとオカリナと出川(親しみ込めて敬称略)」がとても好きだ。   ときどき気になるドラ …

noimage

彼女のバイブル

彼女はすごくよく笑う人である。 微笑むとかではなく、声を上げてよく笑う。 とにかく何を言ってもよく笑うので、 人からお笑い偏差値が低すぎると言われたこともある。 これは彼女があまりテレビを観ないことに …

noimage

彼女のInstagram

彼女はこの1月からInstagramのアカウントを自分で作って自分で管理している。 このブログやTwitterやGoogle+は僕が100%管理運営していて、彼女は傍観しているだけなのだが、 Inst …

記事内の彼女の絵や写真。
2019年10月
« 9月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ