彼女の話

彼女が失うもの

投稿日:

彼女は、こういう自分が失うものは何だろうと考える。

人と距離をあけすぎる自分。みんなができることができない自分。嫌なことにはどうしても我慢ができない自分。そしてそれらすべての自分から逃げている自分。


彼女にはできないことが多すぎる。
彼女の中で
これはできる、これはできない、の境界線がかなり意図的に明確に認識されている。
その線引きは打弦楽器みたいなもので、ピアノを想像してもらえばいい。
生活していく中で起こる様々な出来事が刺激となり彼女の感情の鍵盤を叩く。
鍵盤を叩くという刺激を受けたと同時に、判定という名の弦が弾かれ、”できない”の音が鳴るのだ。


食事に誘われる。人と一緒に食べられない。行けない。
食事に誘われる。ステンレスの食器が出てくる。食べられない。
食事に誘われる。ずっと笑っていなければいけない。仮面をはめ続けていられない。


何ものにも束縛されず、人との交流を避けてまで自分だけの自由に閉じこもる。
侵襲が少なく可逆的。
安全だけはいつも彼女の横にある。
そしてできないことが増えていく。


彼女はピアノの音がとても好きだ。
あの白と黒と時々ゴールドが大好きだ。

今はもう使わなくなった白黒フィルム。
いつまでたっても色がつかない自分の絵。
めくってもめくっても白と黒と無数の灰色がつづくスケッチブック。


こういう彼女が失うものはなんだろう。



彼女が失うもの

-彼女の話

執筆者:

関連記事

怒りと光り

怒りと光り

このタイトルを見て、僕は一体何を書こうとしていたのかまったく思い出せない。 下書きフォルダでほこりをかぶっていただけのタイトル。 だけどほうっておけないかもしれないこのときの出来事を 僕は世の中に上げ …

noimage

いちねんせいのかのじょ3

小学校に入学してからというもの、 一年生にお決まりの黄色い帽子を彼女はいつも引き出しの中にしまっていた。 おかげで彼女は毎日毎日毎日黄色い帽子をかぶり忘れ、 結局数回しか被らず、きれいなままでその帽子 …

noimage

彼女と窮屈な箱

これも巨大物恐怖症と同じく彼女の弱点のひとつだが、 大きすぎるものと反対に彼女は狭い空間を嫌がる。 閉所恐怖症だ。 なぜこうなったかは分からないが、 とてもとても小さかったときの彼女はむしろそんな場所 …

noimage

忘れていく彼女 -感情

前回と前々回のつづき 彼女にはときどき顔を合わせるおばあさんがいる。 顔を合わせても話すときもあるし、話さないときもある、 それくらいほんの少しの時間一緒にいるおばあさんだ。 そんなおばあさんが小学生 …

知ること

知ること

彼女はいつも何かを考えている。 「考える」とは一見思慮深く大切なことのように思えるがなにごともやりすぎはよくない。 彼女は考えることを止めることができない。 ひとは脳で「考える」。 「考える」と感情が …

記事内の彼女の絵や写真。
2019年8月
« 7月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ