彼女の話

彼女が失うもの

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彼女は、こういう自分が失うものは何だろうと考える。

人と距離をあけすぎる自分。みんなができることができない自分。嫌なことにはどうしても我慢ができない自分。そしてそれらすべての自分から逃げている自分。


彼女にはできないことが多すぎる。
彼女の中で
これはできる、これはできない、の境界線がかなり意図的に明確に認識されている。
その線引きは打弦楽器みたいなもので、ピアノを想像してもらえばいい。
生活していく中で起こる様々な出来事が刺激となり彼女の感情の鍵盤を叩く。
鍵盤を叩くという刺激を受けたと同時に、判定という名の弦が弾かれ、”できない”の音が鳴るのだ。


食事に誘われる。人と一緒に食べられない。行けない。
食事に誘われる。ステンレスの食器が出てくる。食べられない。
食事に誘われる。ずっと笑っていなければいけない。仮面をはめ続けていられない。


何ものにも束縛されず、人との交流を避けてまで自分だけの自由に閉じこもる。
侵襲が少なく可逆的。
安全だけはいつも彼女の横にある。
そしてできないことが増えていく。


彼女はピアノの音がとても好きだ。
あの白と黒と時々ゴールドが大好きだ。

今はもう使わなくなった白黒フィルム。
いつまでたっても色がつかない自分の絵。
めくってもめくっても白と黒と無数の灰色がつづくスケッチブック。


こういう彼女が失うものはなんだろう。



彼女が失うもの

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