彼女の話

彼女の洞窟リテラシー

投稿日:

彼女は本当はずっと小さな頃からずっとずっと感じていたのだ。
自分は何か違うということを。
どんなに自己主張が強くてもちっとも伝わらないことはどこかで分かっていた。
むしろあの頃の方が自分の中の宇宙に気付いていたかもしれない。
彼女は俯いて自分の小さな胸を覗き込み
頭の中に広がるその洞窟を見ていた。


学校に行ったり、本をよんだり、色々と知識がついてきて
彼女はいつの頃からか自分は違う星から来たんだろうと思うようになった。
大人にきくと、そうだ、あなたは橋の下で拾われてきたのだと言っていた。
今思えば冗談のようだったとも思うが、その頃は「そうだろうなぁ」と思った。


年経て更に世の中らしきものに触れるようになったとき、
自分が違う星からやってきたということは
どうやらほぼほぼ不可能な話であると気づくようになった。
その頃には大気圏を超えずとも
自分とは違う言葉を話し、今までに触れたことのない空気のある他の土地があることを知った。
自分の場所はそこではないかと思い込むようになった彼女は飛行機に乗った。
それから数年を過ごしたが、ある程度言葉を共有するようになっても
彼女の洞窟に光が照らされることはなかった。


どこにいても、何をしていても、
いつも彼女の背後で主張する今にも発火しそうなカラカラの虚無感。
・・・乾いているなら海にでも潜ればいいのだろうか。



違う星にはいけないことが分かった。
違う土地に行ってもそこではないことが分かった。
知らなければ、行ってみなければ、それは分からなかったことだった。

今回もとりあえず潜ってみなければ分からない。
彼女は最近プールに行って1000m以上ゆらゆら泳ぎ続けている。
四角い海で彼女は上を見上げて洞窟に光が入るポイントを探している。



彼女の洞窟リテラシー

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

知覚過敏

彼女は再び知覚過敏に悩まされている。 知覚過敏というのは、何らかの原因で歯の表面のエナメル質が剥がれ落ち 象牙質がむき出しになることで、神経に刺激が伝わりやすくなり痛みとなってしまう症状だ。 予防歯科 …

スキン・ピッキング/Living

スキン・ピッキング/Living

彼女のスキン・ピッキングが始まったのは幼少期である。 彼女は保育園のお昼寝で使う布団の端から端まで血のドットを並べた。 血は皮をむしった彼女の唇からあふれ出たものだった。 こんなことをしたらおかしく思 …

彼女のおでかけーお化粧編

彼女のおでかけーお化粧編

彼女は街へ出かけるとき割ときちんと化粧をする。 普段仕事に行くときはほとんど頓着しないが、 それは職場でそんなことしたって意味がない、と思っているからだ。 彼女は化粧をするとき、顔がキャンパスだとよく …

noimage

そこにこころが

彼女は手紙とかLINEとかメールが苦手だ。 そこに心があるかもと思うと開くのがいつも億劫になる。 彼女は時節のあいさつを大切に思っている人で、 そういう時期になればハガキをだす。 でもお別れの手紙とか …

noimage

彼女とゴミ

彼女は意外とエコな人だ。 彼女自身は貧乏性からくるものだと思っているようだが、結構地球に優しいのである。 (寒いというだけで心まで死んでしまう人なので、 冬は暖房がつけっぱなしになってしまうことを除け …

記事内の彼女の絵や写真。
2019年8月
« 7月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ