彼女の話

彼女の洞窟リテラシー

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彼女は本当はずっと小さな頃からずっとずっと感じていたのだ。
自分は何か違うということを。
どんなに自己主張が強くてもちっとも伝わらないことはどこかで分かっていた。
むしろあの頃の方が自分の中の宇宙に気付いていたかもしれない。
彼女は俯いて自分の小さな胸を覗き込み
頭の中に広がるその洞窟を見ていた。


学校に行ったり、本をよんだり、色々と知識がついてきて
彼女はいつの頃からか自分は違う星から来たんだろうと思うようになった。
大人にきくと、そうだ、あなたは橋の下で拾われてきたのだと言っていた。
今思えば冗談のようだったとも思うが、その頃は「そうだろうなぁ」と思った。


年経て更に世の中らしきものに触れるようになったとき、
自分が違う星からやってきたということは
どうやらほぼほぼ不可能な話であると気づくようになった。
その頃には大気圏を超えずとも
自分とは違う言葉を話し、今までに触れたことのない空気のある他の土地があることを知った。
自分の場所はそこではないかと思い込むようになった彼女は飛行機に乗った。
それから数年を過ごしたが、ある程度言葉を共有するようになっても
彼女の洞窟に光が照らされることはなかった。


どこにいても、何をしていても、
いつも彼女の背後で主張する今にも発火しそうなカラカラの虚無感。
・・・乾いているなら海にでも潜ればいいのだろうか。



違う星にはいけないことが分かった。
違う土地に行ってもそこではないことが分かった。
知らなければ、行ってみなければ、それは分からなかったことだった。

今回もとりあえず潜ってみなければ分からない。
彼女は最近プールに行って1000m以上ゆらゆら泳ぎ続けている。
四角い海で彼女は上を見上げて洞窟に光が入るポイントを探している。



彼女の洞窟リテラシー

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