彼女の話

抗えないもの

投稿日:

彼女は自分の体の異変を認めざるを得なくなってきた。
頭痛に悩まされているのは以前からだが、それ以上におかしいのだと呟いた。
少し不安気だった。


朝目が覚めたとき、脳がとけてスライムになったようにドロリと動くという。
頭痛が昼夜問わずちょこちょこやってくる。
お腹も緩みっぱなしで落ち着かない。
一日に何度もあれやこれやの薬を飲む。
汗ばんでいるのに寒くてたまらない。
さっき眠ったのにまた眠たくなる。
やることは山ほどあるのに倦怠感に耐え切れずすぐに横になってしまう。
とうとう最近は食事も作らずあるものをかじるだけになった。

月の内、半分以上がこんな状態であるという。


彼女はここ数ヶ月ずっとそんなで何もできやしないと怒っている。
以前はこんなにひどくなかった。
体がおかしいのだと気づいたのはここ最近だから、
それまでの数ヶ月間は自分の怠惰に自分であきれて傷ついていた。


生まれながらにもった気質のほかに人間がどうにも抗えないのはホルモンだ。
自分をよく知ることでうまく付き合えるようにもなる気質と同じで、
ホルモンも自律神経を乱すような生活習慣でなければそこそこうまくやっていける。
だが特に女性はホルモンには振り回されがちになるようだ。
彼女は相変わらずあまり食べないが、目に余るような不摂生を常にしているわけではない。
これといって自分は何も変わっていないのに体が勝手に変わってしまうのだ。
「誰かに乗っ取られたような気分だ」

今度は肌がすごく荒れだしたという。
シワも増えたしシミも目立つ。
たくさん寝てるのにどうして??と今にも泣きだしそうな顔をしている。


これから寒くなる。
彼女が恐れる季節はもう目の前だ。
彼女がどうしてあんなにも異常に寒さを怖がって嫌がるのか分からないが、
僕は今の彼女の状態で冬を迎えるのはかなり危険ではないかと思っている。

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

ある朝

彼女はもう何年も飲まない日の方が少ない毎日だった。 飲みすぎることも時にはあったが、ほとんどは彼女の日々のささやかな楽しみであった。 ある朝彼女はいつものように目を醒まし、 いつものように布団から抜け …

noimage

彼女が人を殺した朝

彼女はひどく青白い顔をして落ち着かない様子で言った。 「人を殺した」 僕は何をバカなことを、と一蹴しかけたのだが、 彼女のあまりにおびえた様子に少し動揺してしまった。 とにかく 彼女は人を殺したと言っ …

noimage

結婚

彼女は結婚していない。 する予定もないし、する相手もいないし、するつもりもない。 結婚とは不思議なものだよなぁと彼女は思う。 たった一枚の紙切れに辿り着くまでに、 喜怒哀楽どころか希望とか目標とか不安 …

noimage

(no title2)

彼女は最近ひどく不安定だ。 ゆらゆらしているのに、口は貝のようにしっかりと固く閉ざされている。 誰にでも憂鬱になるときはある。 僕はただ待つしかない。 関連

noimage

暖房便座と彼女の熱量

彼女はフローリングの床の上に文字通り転がっていた。 「真冬の立体駐車場のコンクリートの上に転がっているみたいだ」と呟いた。 「今日はすごく寒いね」 真夏ほどではないにしても外気温はまだ30度近くある。 …

記事内の彼女の絵や写真。
2019年8月
« 7月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ