彼女の話

彼女のじんましん

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ある夜、彼女は食事を作っていた。
冬の間は土鍋を好んで使う。
土鍋で作って食したものはどれも心身を熱くする。

土鍋の中に水を入れ、昆布を入れ、水でそそいだ茹でうどんを入れ、
卵を落として蓋をしたところで彼女は顔がかゆいことに気が付いた。

彼女はなんとなく
「こういうとき掻いてはいけないんだよなぁ・・・」と思いながら
ガスの青い火を眺めていた。

だんだん鼻を中心に頬や顎がパリパリになっていくのを感じた。
まるでセメントが顔面で乾きあがって本物の仮面の型をとられているような気がしてきた。
かゆみが我慢ならない。


こんなに乾燥するなんて何か塗らなくちゃ。
そう思った彼女は鏡を置いて自分の顔を覗き込んだ。
仰天した。
彼女の顔は鼻から頬から真っ赤っ赤に腫れあがっていた。


彼女はとっさにアレルギーの可能性を考えた。
しかし彼女はこれまでに花粉症はおろかアレルギーなんてものに反応したことはないのだ。
何が原因が全然分からない。

煮込みうどんを作っている間、生姜も舐めたし、味噌も触ったし、白ワインも飲んでいた。
その前には植物に水をやるときに少し土にも触れたかもしれないし、
もっと言うなら城の中のこの空気だって疑える。


彼女は突如としてふってわいたこの赤い顔にどう対処していいか分からなかった。
生死に関わるようなアナフィラキシーって感じでないのが救いだが、
この顔は一体いつまで続くのか、そして何より大好きなこの城の中の何がいけないのかドキドキした。


その夜は結局味噌煮込みうどんにはそっと蓋をし、
空腹と赤い顔を抱えて布団にもぐりこんだ。
かゆい顔を不安でひどく冷えた手で覆ったままいつのまにか眠った。

-彼女の話

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