彼女の話

彼女と花

投稿日:2016年12月3日 更新日:

彼女は花が好きじゃない。

唯一心を許せるのはかすみ草だと思われるが、実はそれもあまりよく接したことはない。

彼女は自分の城のベランダにプランターをいくつか置いていて、

ハーブの花が咲いたときはああ、咲いたな、これから種が落ちるんだな、と思った。

そしたらまた食べられるなぁ、と。

 

すごいなぁと思う風景が一面のコスモス畑であったり、

いつもの通勤路の1シーンがなぜか突然気になったとき、そこに一輪のたんぽぽがあったりするのだが

彼女はそれが好きだとか、ほほえましいとか思っているわけではあまりない。

もしそのコスモス畑が荒らされて、一部がくしゃくしゃになってしまったのを見たとしたら

彼女はきっと心を痛めるだろうが、

もし完璧なコスモス畑の上を一枚の古く茶色くなったコンビニの袋が風で滑っていっても

彼女は同じように悲しくなるという。

完璧なコスモス畑と真新しい折目がついたビニール袋。

彼女にとってはどちらも特別ではないのかもしれない。

 

ユリの花は一番きらいで特に近づきたがらない。

その見た目の仰々しさときつい匂いと花粉が汚い、と嫌悪する。

なぜあの花はあんなに主張するのか。

この後の人生でないとは思うがあの花を使った花束を贈られるようなことがもしあれば

どんなに相手を気遣うことに心を砕いている彼女でも目にした瞬間凍り付いて受け取ることができないだろうと恐れている。

 

彼女は緑が好きで、(食べられない)植物もかわいがって育てたりもしているが、

花がつくものはあまり連れてこない。

 

よく年をとると花を愛でるようになると言われるが、

彼女は年を経るごとにますます嫌いになっていて、

花を好きになれないのはさみしいことだろうかと少し気にしている。

 

彼女と花

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