彼女の話

彼女と精油

投稿日:

彼女は精油が好きでたくさんもっている。
高価なものなので、少しずつ少しずつ集めてきた。
中でもフランキンセンスが一番のお気に入りで欠かさない。


初めて精油の匂いをかいだとき、彼女はどれをとってもとにかく臭いと思った。
ひとつも好きなものはなかった。
今になってわかったようだが、昔は単純に精油を嗅ぎ慣れていなかったのもあるだろうし、
精油は一種類だけの匂いを嗅いでしまうと香りがキツすぎたりするらしい。
いくつかの精油をブレンドすることでかなりマイルドになるという。


彼女が誰かのために何かをするということはほとんどないが、
ときどきこの精油の調合はするのである。
誰かが頭痛がひどいとか夜寝付けないとか聞くと、
相手が嫌いかもしれないと心配しながらも症状に見合った精油をブレンドし
少量を遮光瓶につめていそいそと渡している。
渡した相手と日付と調合内容は手帳にメモしているようだ。


彼女は自分のことばかり考えているから、人のことなんてほとんど興味がない。
それなのにこの精油の組み合わせをああでもない、こうでもないと試作しているとき
確実にその相手のことをずっと想像しているのである。
彼女は自分でもこれが不思議だ。

精油は効能も多いが、注意事項や禁忌も多い。
精油と付き合うのは人と付き合うのと少し似てる、と彼女は思う。



彼女と精油

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

忘れていく彼女 -感情

前回と前々回のつづき 彼女にはときどき顔を合わせるおばあさんがいる。 顔を合わせても話すときもあるし、話さないときもある、 それくらいほんの少しの時間一緒にいるおばあさんだ。 そんなおばあさんが小学生 …

彼女とテレビ

彼女とテレビ

彼女はほとんどテレビを観ない。 唯一続けて毎週観ているのはイッテQで、出演者はみんな好きだが、 特に「イモトとオカリナと出川(親しみ込めて敬称略)」がとても好きだ。   ときどき気になるドラ …

noimage

探しもの

彼女の同僚の財布が消えた。 帰宅後連絡を受けた彼女は探すのを手伝いに職場に戻った。 見つからなかったらいけないので、失くした彼のために急場しのぎの数万円を財布に入れた。 まずはみんながパニクっているの …

noimage

彼女のバイブル

彼女はすごくよく笑う人である。 微笑むとかではなく、声を上げてよく笑う。 とにかく何を言ってもよく笑うので、 人からお笑い偏差値が低すぎると言われたこともある。 これは彼女があまりテレビを観ないことに …

noimage

彼女の一番古い記憶

-覚えている限りの一番古い記憶がわかるか。 「わかる」   -何歳頃だったと思うか。 「3歳から5歳…たぶん、3歳か4歳だと思う。」   -思い出した記憶には色がついているか。 「 …

noimage

2019/06/23

6月

noimage

2019/05/18

3月11日-ある春の日

表面下の世界

2019/01/16

表面下の世界

記事内の彼女の絵や写真。
2019年6月
« 5月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ