彼女の話

彼女と精油

投稿日:

彼女は精油が好きでたくさんもっている。
高価なものなので、少しずつ少しずつ集めてきた。
中でもフランキンセンスが一番のお気に入りで欠かさない。


初めて精油の匂いをかいだとき、彼女はどれをとってもとにかく臭いと思った。
ひとつも好きなものはなかった。
今になってわかったようだが、昔は単純に精油を嗅ぎ慣れていなかったのもあるだろうし、
精油は一種類だけの匂いを嗅いでしまうと香りがキツすぎたりするらしい。
いくつかの精油をブレンドすることでかなりマイルドになるという。


彼女が誰かのために何かをするということはほとんどないが、
ときどきこの精油の調合はするのである。
誰かが頭痛がひどいとか夜寝付けないとか聞くと、
相手が嫌いかもしれないと心配しながらも症状に見合った精油をブレンドし
少量を遮光瓶につめていそいそと渡している。
渡した相手と日付と調合内容は手帳にメモしているようだ。


彼女は自分のことばかり考えているから、人のことなんてほとんど興味がない。
それなのにこの精油の組み合わせをああでもない、こうでもないと試作しているとき
確実にその相手のことをずっと想像しているのである。
彼女は自分でもこれが不思議だ。

精油は効能も多いが、注意事項や禁忌も多い。
精油と付き合うのは人と付き合うのと少し似てる、と彼女は思う。



彼女と精油

-彼女の話

執筆者:

関連記事

noimage

彼女と時計

彼女の城には時計がない。 もう何年も置かない。 とにかく彼女はあの秒針のカチコチ音が大嫌いだ。 他の空間で寝なければならない時などはどこかに隠してしまうが、 そうできるときとできない時がもちろんある。 …

noimage

バランスボールの中の小人

彼女は自分の中で何かが急速に変化していくのに気付き始めた。 まるでバランスボールの中にいつの間にか閉じ込められた小人みたいな自分。 どんなに抜け出そうともがいても、もがいた方向に転がるだけで突き破れな …

noimage

(no title4)

「美しいものだけをみていたいって思うのよ」 「たとえかなわなくっても」 関連

noimage

彼女と飲み会

昨夜は彼女の職場の飲み会があった。   彼女はいつだってできるだけ早く自分の城に帰りたいと思っているし、 何より人と長い時間接しているのが苦手だ。 彼女は飲み会が好きじゃない。 しかも一日中 …

noimage

彼女のカトラリー

彼女のカトラリーはほとんどが木製だ。 ステンレスなど金属のものは調理用に使うことはあっても口はつけない。 いつの頃からそうなったのかは分からないが、木のカトラリーを使いだして久しい。 子供のころから彼 …

表面下の世界

2019/01/16

表面下の世界

渇き

2019/01/07

渇き

秋晴れ

2018/11/24

秋晴れ

記事内の彼女の絵や写真。
2019年2月
« 1月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ