彼女の話

好きなことを憂違う

投稿日:2017年1月31日 更新日:

彼女は絵を描くのが好きだ。
本を読むのも好きだ。
音楽を聴くのも好きだし、興味のあることを勉強するのも好きだ。
でもそれらのひとつも出来ない時がある。

彼女は人より少し疲れやすい。
一日中あらゆる刺激が彼女を四六時中まとわりついてなかなか離れることがない。
玄関先でジャケットについたほこりや花粉を払い落とすようにすべてを振り切ることができない。
日によっては特に誰かの情動が彼女の頭と心を支配して、それにムリヤリ乗っかるように自分の考えや感情を確かめようと思いをはせる。
どんな刺激を聴いても触れても目にしても、一番彼女を疲れさせるのはもう自動的に行ってしまうこの作業だ。
そしてこれはとても労力がいる。


そのつい果てにぐったりした彼女はもうその日絵を描けない。
描きたいのに描けない。
そんなフラストレーションの中で彼女は瞼を閉じるしかない。


本当に好きなことをやっている人は寝る間も食べる間も惜しんでひたすらそれに没頭するという。
彼女はそれができない.
自分は好きだ、と思っているだけで本当はそうでもないのかもしれない、と寂しくて涙が出る。
「これが、自分が好きだ、と言えるものなのだ」
それを自分自身が否定しているような気がしてくる。


-彼女の話

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