彼女の話

デジャヴ

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彼女のデジャヴはすべて「確かに夢でみたもの」だそうで
彼女はそれがいつ頃みた夢であったかも憶えている。
デジャヴとなった夢の中では感情はなく「何を考えても思っても感じてもいない」。
さらには「どうしてあんなところにいたんだろう」とか
「なんの意味もないようなつまらないドキュメンタリーみたいな夢だったな」などと
その夢を見た後目覚めた際にぼんやりと思った具体的な気持ちもデジャヴと一緒に沸き起こるという。

逆に夢ではなく、以前確かにここにきたことがある、といったような既視感を覚えたことはまったくない。
「来たことがあるよう気がする」と思ったときには大体小さなころ確かに来た、という”記憶”となって想起され、
それはデジャヴとは異なる。


彼女は今住んでいる城に越してきてから既視感が増えた。
それは例えば玄関からキッチンを通り部屋に入るまでの、
そこ20秒ほどの間に数シーンが切れ切れにデジャヴとなって湧き上がる、といった風に。

  • 電気のスイッチに置いた自分の手とそばの壁に掛けた帆船のバナーの一端
  • 冷蔵庫のそばにおいた買い物袋
  • 昨夜からシンクに置いたままになっている、一つの空き缶と一つのカップ一つのスプーン
  • 床に落ちたエプロンとペダル式のごみ箱


  • ちなみに帆船のバナーは彼女が海外から持ち帰ったもので1年ほど前に思い出して壁にかけている。
    冷蔵庫は彼女が5か月ほど前にウォールステッカーで自分でデコレートしており、同じものは二つとない。


    それは断続的にパッパッパッパッと既視世界となり、
    そのたびに彼女は「お」「あ」「っ」「・・・」と反応する。
    そして最後の瞬間のあと、彼女は直前の20秒をもう一度見ようとおもむろにぼんやりと後ろを振り返る。
    「また・・・」


    デジャヴの研究や解明はほとんどなされていないようだが、
    彼女はそんな自分の度重なる経験から彼女にとってデジャヴとは予知夢的な位置におかれている。
    彼女はKiroroの『未来へ』を大変嫌っているのだが、
    それは『あれがあなたの未来』という歌詞が気に入らないからだ。
    耳にするたびに「私の未来を誰かに指し示されてたまるかい」という
    捻くれた気持ちが起こって嫌なのだそうだ。
    そんな彼女がことデジャヴに関しては悩ましく、
    「これは私のレールだか運命だかはあるのかもしれないなぁ」と
    半ばあきらめ気味なのである。

    「あの夢をみたときには、あんな所に自分がいるはずもないのにと鼻で笑ったところに実際今いたりするのだ」


    のちにデジャヴとなって思い出されるそれらの夢は
    それまで自分の頭の中にあったことさえ知らなかったものであるはずなのに
    突如鮮明なシーンとなって飛び出てくる。
    不思議で気味が悪く良いことも害もなくただ一瞬の感興を引っ張り出して
    またただ忘れていくのだ。
    その背後に意味とかメッセージがあったとしても、ほとんど気づかれないままで。



    デジャヴ

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