彼女の話

彼女と少女のコスモロジー

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『内なるものへの適切な態度』


彼女ははっとした。

いつも彼女は遥か上空のようなところから白い箱と少女を眺めていた。
絵本に出てくるような神様や天国にいる人たちは下界をこんな風に見下ろしているのかもな、と考えていた。
天上界と下界を隔てる薄い雲があるように、
真っ暗な世界の中で、少女の周りはいつもモヤがかかったようにうっすらと白かった。
女の子はどうしてこちらに気付かないのだろう、と思うこともあったが、
天上人が自分たちを見下ろしていることに自分たちが気付いていないように、
少女は自分の存在に気付けないのだろうと思った。


『内なるものへの適切な態度』


しかし彼女はそれは大きな間違いだったことに突如として目覚めた。
頭を真上からガンと叩き割られたような気がして涙が出た。
叩かれたのは頭なのに胸がひどく痛んだ。

その内、彼女は少女のすぐそばに居る自分に気付いた。
驚いた。

少女はこちらを見ていない。
白い建物に背を向け、少し俯いている。
彼女からも少女の顔は見えない。
彼女は建物の左側からちょうど少女の顔の側面が見える角度で膝をついていた。
絶対に関わることなどない、と思った少女がそこに立っている。

そんなことを考えているといつの間にか少女は今彼女の手の届く距離に立っていた。
一体彼女が近づいていったのか、少女が接近してきたのか全然分からなかった。
ただ二人はいつの間にかその距離を縮めていたのである。
彼女は驚いたし、少女が少し怖い気もした。
目の前にいるのに相変わらず横を向いたままの少女は
髪が垂れ下がっていて、どんな顔か表情かも分からない。

少女は白いワンピースを着ている。


気付くと彼女は両手で少女を引き寄せていた。
びっくりするほどフカフカでフワフワしていた。
温かな空気か出来立ての厚い雲を抱いているみたいだった。



『内なるものへの適切な態度』


少女は抱きしめられても何もしなかった。
抱き返すでもなく、声を出すでもなく、
変わらずあらぬ方向に顔を向けて表情は見えなかった。


彼女はそれから何度か少女を抱きしめに行っている。
今も彼女はその子がどんな顔をしているのか知らない。


少女が今まで気づかなかったのは、彼女が近づこうとしなかったからか。
それとも彼女に対して興味がなかったからだろうか。
「いや、今だって前と変わらずあの子は私にきづいていないかもしれない」



あの時急激に二人を引き寄せたものはなんだったのだろう。
彼女が言うように少女の世界が変わっていないのだとしたら、
変わったのはもしかしたら彼女の世界の何かかもしれない。


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