彼女の話

彼女と車

投稿日:2016年12月15日 更新日:

彼女は車の運転ができない。

免許を持っていないのだ。

今まで、ないならないでどうにかなるものでさして困ったことはなかったのだが

最近彼女はそろそろ免許をとろうか、と考えている。

 

運転しないせいかはわからないが、

彼女は物心ついたときから車に不思議な感覚を持ってしまうことがあった。

それはよく大きな通りを歩道橋や橋や高速道路から見下ろす、といった状況で起こるのだが、

規則正しく動くたくさんの車の中から突然ドライバーも同乗者もみんな消えてしまい、

車だけが勝手に動きだしてしまう、という感覚だ。

それはたとえば近未来の映画に出てくるような自動運転とか、

車体の底に強力なマグネットが取り付けられていて

それらをどこかで誰かが制御している、といったような類の感覚ではなく

車たちそれぞれが意思をもって走りまじめに止まりルールに従って右折している、といったものだ。

 

子供の頃はじめてその現象に出会ったときは、

それが現実ではなく自分の中だけで起こっているものだと認識できずひどく狼狽した。

こわいような気もしたし、アニメをみているみたいだ、とも思った。

 

彼女は今でもそんな風景にであえばしばらくぼんやりと眺めている。

彼らは彼らの自由意思でどこへ行くだろう。

そして自分が運転した時、

突如として消えてしまうドライバーとしての自分はどこへ行けるだろう。

それも少しこわいような気もするし、楽しみであるような気もしている。

 

 

彼女と車

-彼女の話

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

noimage

ベストアルバム for her

「ベタか笑」 Ben Folds Rockin’ the suburbs 関連

2001.9.11のあの夜

2001.9.11のあの夜

あの9.11から16年も経った。 彼女はあの夜のことを16回も思い出しているということだ。 その頃彼女はMD/CDラジカセを愛用していた。 使うのはもっぱらMDやCDでラジオの電源を入れることはほとん …

雪の夜

雪の夜

夜道を歩く彼女の前にひとつの雪の塊りが降りてきた。 降ってきたのはたったひとつで、見上げてもそれに続くものはないかに見えた。 たったひとつで降りてきて、寂しかったろうなと思ったものの 宙を舞う小さなゴ …

空腹の彼女

空腹の彼女

彼女の体は燃費が悪い。 普段から少ししか食べない。 その分しか胃のキャパがないのか、食べるとすぐにお腹がいっぱいになってしまう。 もしくは食べた、という事実で満腹になったような気になって食事は終わる。 …

noimage

彼女が人を殺した朝

彼女はひどく青白い顔をして落ち着かない様子で言った。 「人を殺した」 僕は何をバカなことを、と一蹴しかけたのだが、 彼女のあまりにおびえた様子に少し動揺してしまった。 とにかく 彼女は人を殺したと言っ …

優しい時間

2018/10/19

優しい時間

noimage

2018/09/18

アンビバレンス3

棚

2018/08/29

記事内の彼女の絵や写真。
2018年11月
« 10月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ HSPへにほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へにほんブログ村 美術ブログへ